ライトコインとは何か、なぜビットコインにとって不可欠なのか?

今回は最近の価格上昇(2カ月で数倍になったようですね)で注目を浴び始めた暗号通貨Litecoin(ライトコイン)について、技術者ではない私が学習しながら検討してみます。

私はずっとメディア産業に携わってきました。WELQやフェイクニュースの問題以降、デジタルメディアには広告モデルではないビジネスモデルが必要だという思いを更に強くしました(もともとそう感じていました)。広告モデルを止めるというEv Williamsの決断はとても大きな要因になりました(私もこのような記事を書きました)。

代替案として、以前からインターネットにおけるマイクロペイメントに可能性を感じており、暗号通貨はその有力な手段として浮上していました。この探索の中で、Litecoinに行き当たりました。Litecoinはこのマイクロペイメントの実現に焦点を合わせていますので、とても興味深く感じられたのです。


分析

Litecoinが価値を帯びるかは、Bitcoinのレイヤーセカンドの開発次第です。価格上昇はさまざまな点において、Litecoinの相対的優位性を押し上げるかもしれません。Litecoinはマイクロペイメントにおいて特異なバリューを発明し、ユニークになる可能性があります。開発者のCharlie Leeは中華系アメリカ人旺盛な本土、在外中華系の送金・決済需要を取り込む可能性があります。


Litecoinの背景・特徴

Litecoinは、Bitcoinネットワークが動き始めた2009年から2年後の2011年に元Google エンジニアのCharlie Leeが開発しました。BitcoinがゴールドならLitecoinはシルバーというポジションで、Bitcoinの上位互換っぽい技術仕様にしてあります。
長い間あまり活発な開発がされていなかったLitecoinですが、Bitcoinのスケーラビリティ問題やコミュニティ内の対立が長期化している中で、再び注目が当たり、投機資金が流入しました。LitecoinはBitcoinが実装に手をこまねいていたSagrigated Witness(SegWit)の実装に成功しました(SegWitの分かりやすい解説は大石哲之氏のブログを参照)。

LitecoinはBitcoinに仕様が酷似していて、長い間余りアップデートしなかったことがここにきて生きてきました。Bitcoinのコア開発者がテストを行うのに相応しかったのです。現在、Bitcoinコア開発者の一部はLitecoinでのプロジェクトに関与しています。「Paywall付きのMedium」を標榜するYoursはプロジェクトをLitecoinに完全に移管しました(最近はBitcoin Cashに移管しました。節操が無いですね)。

Charlieは世界最大の暗号通貨取引所CoinbaseのDirector of Engineering(エンジニアリング担当取締役)を務めていました。Charlieは一時期Ethereumに投資していた時期があったと言いますが、The DAO以降のハードフォークに幻滅して、ETHをすべて手放したといいます。一方、Litecoinプロジェクトはパートタイムに過ぎませんでした。しかし、好機を迎えたため、Coinbaseを辞してフルタイムで開発に取り組むことになりました。BitcoinのSegWit実装をめぐって有益な提案をしたことで知られるシンガポールの@Shaolinfryが2人目のフルタイムのコア開発者となりました。いまChalieはチームを組織している最中と言います(参考記事:Life After Coinbase: Can Charlie Lee Keep Litecoin’s Revival Alive? – CoinDesk

マイクロペイメント

Litecoinはマイクロペイメント(少額決済)にフォーカスしています。Bitcoinは1BTCと1000BTCのトランザクションに同じ手数料を課します。これでは少額の支払いには向きません。少額の支払いに対してはより小さい手数料で済む必要があります。コーヒーやブログコンテンツのような安価な商品の決済に利用できる「シルバー(銀)」が必要です。

ChalieのMediumポストを引用します。英語に慣れている人はポストを直接読んだほうが速いでしょう。とても分かりやすい文章です。

以下ざっくりとした要約です。

  • Bitcoinだけではリアルタイムかつ安価な送金をスケーラブルに提供することはできません。Lightning Network(LN)の構築によりBitcoinとLightcoinの間により緻密な互換性が生まれます。Bitcoinユーザーが安く速いLitecoinユーザーに移行する機会に賭けたいと考えています。
  • リアルタイムでコインAをコインBに両替し送金する技術(Atomic Swap)が開発され、取引所などの第三者に頼らず(トラストレス)に取引することができれば、Bitcoin(ゴールド)とLitecoin(通貨)を併用する意義は揺るがなくなります。

以下はブログの抄訳です。比喩が多くわかりやすいですが、専門的な話も含みますので、読み飛ばしてもいいかもしれません。

BitcoinにおいてのLightning Network(LN)はLightcoinを利用する理由を無くすることになると指摘する向きがあります。人々がBitcoin上で即時的なトランザクションを行えるならば、なぜ彼らはLitecoinを使うのでしょうか。LNを伴ったとしてもBitcoinは世界中の全員にサービス提供できるわけではありません。1MBブロック、LN、SegWitの状態で5億ユーザーにサービス提供が可能です。LNノードはLNトランザクションに対しフィーを徴収します。このフィーはBitcoinネットワークフィーに対応したものになるでしょう(筆者注:高くなりやすいと想定できる)。2つのLNは互換性があります。私はこのユースケースが経済的合理性に適うかはわかりません。私たちは2つのLNが構築され、運用されるまでその結果を知ることができません。

BitcoinのLNトランザクションはLitecoinのLNトランザクションよりも高価になるはずです。LNトランザクションをLitecoinを通じて行い、それからBitcoinに「戻す」ほうが経済的利点があるかもしれません。

2つのハイウェイと考えてみてください。Bitcoinのハイウェイは通行するたくさんの車で渋滞しており、Litecoinのハイウェイは空っぽです。ふたつの道路はつながっておらず、渡るのも不便(集権的取引所とオンチェーン送金)なため、Bitcoinが渋滞していてもLitecoinに車が流れてくることはないのが現状です。LNは高速道路の上に多くの橋を架けます。このたくさんの橋には別の利益もあり、それは高速道路同士を結びつけることです。

Bitcoin高速道路の上に架けた橋は、車がBitcoinに留まる理由を与えるかもしれません(筆者注:Bitcoinネットワークの混雑と高手数料はアルトコインや他の送金手段に優位性を渡しかねないレベルに達しています)。しかし、Litecoin高速道路の便利さと通行料の低さが、車たちに橋を渡り、Litecoinを利用するべきだと説得できるということに私は賭けたいと思います。ただしBitcoinとLitecoinのLNが構築されるまでははっきりとしたことはわからないのですが。

他のベネフィットとしてはLNを通じたクロスチェーントランザクション(Atomic Swap)が挙げられます。2人のユーザーはBTCとLTCを即時にリスク無しで交換できます。効率的な分散型取引所(DEX)は実現可能になろうとしています。あなたがLTCしか持っていないのに、マーチャントがBTCのみ受領可能としていたらどうすればいいのでしょうか。あなたはLTCを即座にLN取引所ノードで両替し、マーチャントにBTCを送金する。これは分散型のShapeShift(筆者注:暗号通貨即時両替サービス)です。
My Vision For SegWit And Lightning Networks On Litecoin And Bitcoin

Litecoinがマイクロペイメントの手段としての価値を発揮できるかはLN実装とAtomic Swapの状況に依存するとCharlieは説明しています。Atomic Swapが機能すると送金などにおいてひとつのコインに固執する必要性が失せるはずです。Bitcoin高速道路が混雑し通行料が高いので、Litecoinによる送金をメインにして、他のコインによる送金が必要なときには、Atomic Swapで出口で他のコインに換えてしまえばいい、と言っています。

Bitcoinはブロックサイズ問題を抱えています。現行の1メガバイトだと、取引量が容量オーバーとなれば、前述の取引手数料が上昇したり取引の確認が遅れるような問題が発生します。ブロックサイズを引き上げるのがいいように考えられます。しかし、サイズを引き上げることにより、ブロックチェーンの容量も増大します。マイナーやフルノードの負担が増し、インフラを整えているプレイヤーへのマイナー・フルノードの集中化が進むという懸念があります。しかも、ブロックサイズとセキュリティはトレードオフの関係にあると指摘もされています。となると、Bitcoinはデッドロック状態なのかもしれません。

互換性と高速道路を繋ぐ橋

ここがLitecoinに将来的な比較優位を与える可能性があり、Charlieが「通行料が高く渋滞するBitcoinから車がLitecoinに移ることに賭ける」と言う根拠です。LitecoinはBitcoinの互換性を活かしてBitcoinの開発者に対して「いつでも来ていいよ」と門戸を開いてもいるのです。

Yoursは同社サービスの決済手段をBitcoinからLitecoinに移行しました。Ryan X. Charlesはポッドキャスト番組「Let’s Talk Bitcoin」でビットコインの送金手数料が極めて高いと指摘しています。「ペイウォールを伴ったMedium」というコンテンツを少額で売り買いする場を目指すYoursにとって時に0.01BTCに達する手数料は高すぎると説明しました。

最近Bitcoinトランザクションの需要が増加したにもかかわらず、ブロックサイズは1MBに限定されています。トランザクションはブロックに収められるために競争しないといけません。これがオンチェーントランザクションフィーが5セントから1ドルに増加する結果をもたらしました。1年前の約20倍の数値です。

Why We’re Switching to Litecoin – Yours Stories

CharlesはBitcoinで起きている問題はLightcoinでも起こりうると指摘してもいます。このときにLightcoinに解決策があるかが焦点になるでしょう。

LNの橋(LNを通じたクロスチェーントランザクション)というビジョンは少しずつ実現しつつあります。Lightning Labは16日、Lightningのテストネット上でビットコインとライトコイン間のトランザクションに初めて成功したと発表しました。

Lightning Network cross-chain atomic swap(以下Lightning Swap)は異なるブロックチェーン間でトランザクションを送信することを可能にします。コインの所有権が変更されたが、Off-chainのトランザクションのため、どちらのブロックチェーンにもトランザクションは記録されませんでした。

Atomic SwapsにはOn-ChainとOff- chainのものがあり、今回成功したのは後者。DecredとライトコインはOn-Chain Atomic Swapのテストも9月に成功しています。

詳しくは私のポストや引用先を読んでみてください。

ビットコイン決済へ大きな前進:BTCとLTCオフチェーンスワップのテスト成功

以下の動画があなたの技術的関心に応えてくれます。

Bitcoinための実験場

SegWitを実装したLitecoinには、MAST(Merkelized abstract syntax trees)を載せることも検討されています。トランザクションのうち少ないデータの利用で複雑なScriptを記述できるようになります。これはEthereumで実現されるスマートコントラクトを少ないサイズで実現できるようにする技術です。ツリーの一部の枝部分のみを実行して、残りの実行しない部分はハッシュ化されており第三者から見えないため、プライバシー保護にもなると言います。

元Bitcoin開発者で、SegWit実装後、Litecoinに移ったJohnson LauはMASTはスケーラビリティとプライバシーを引き上げると主張しています。Lauは当初はMAST実装をBitcoinで試みましたが、Bitcoinのマイナーと開発者などの対立のせいでうまく行かないことに不満を感じ、Litecoinでの開発に移行しました。その後、Bitcoinの政治問題が一区切りがついたためLitecoinの開発をやめていますが、Bitcoinは目を凝らすと問題が山積みです。この問題たちに日がついて政治的な対立が深まることは十分考えられます。そのときにLitecoinの重要性が高まる可能性があります。

マイニング、ASIC、F2pool

次はLitecoinのマイニング(採掘)に関してです。ASICをぶん回すマイニングプールによる集権的構造が固定化したBitcoinと比較しましょう。

  • LitecoinはBitcoinのプログラムコードを元にしているため、基本的なシステムは同じです。発行枚数が4倍の代わりブロック生成の時間がBitcoinの4倍の頻度
  • Bitcoinのハッシュ関数であるSHA-256に対しては専用のハードウェアを製作することで非常に高い効率で計算ができます。Bitcoinのマイナーの集権化を招きました
  • Litecoinが採用するハッシュ関数であるScryptはメモリに負荷がかかるように工夫し、マイナーによるASIC導入を防ごうとしました。開発された当初は採掘難易度が高まっていくことはなく、マイニングプールの登場を防げると期待されました。しかし、実際には下記のポストにあるようにScryptに対しても、2015年の段階で効果的なGPUマイニングの方法が考案されています

scryptがGPUに破られる時 – びりあるの研究ノート

このブログが書かれた2013年はまだ黎明期で、PCを組めばすぐに初期投資がとりもどせるという平穏な状況だったようです。しかし、現在ハッシュレートは取引量・価格の増加とともに急激に上昇しています(Via BitinfoCharts)。

Bitcoinの問題であるマイナーの寡占化はLitecoinでも起きています。F2Poolがハッシュレートの43%を占めています(2017/07/04現在)。F2PoolはBitcoinとLitecoinのSegWit導入に賛成したマイナーであり、現在もUASFに賛成する稀有なマイナーです。最も大きな課題はAntpoolが2位であることです。Antpoolは「ASIC boost」「 The Antbleed Backdoor」の不品行で知られており、現在のBitcoin内対立の一大要因なのです。

信頼のおけるマイナーへの一定の集権の方がむしろうまくいく? Via Litecoin Foundation

巨大な送金需要とサプライチェーンを握る中華系とのホットライン

開発者のメインが在外中華系である利点はこの2つ。

  • 開発者とマーナーがともに中華系なためコミュニケーションが円滑な可能性があること
  • 全世界の中華系の送金需要を取り込める可能性

下のビデオはCharlieが先週の武漢でのミートアップで収録されたものですが、北京語を話しています。

莱特币之父查理大帝:这就是赌博_老板联播-梨视频官网-Pear Video

@TheRealXinxi、@shaolinfry を含めたLitecoin開発者は在外中華系。暗号通貨のマイナーとしても、ユーザーとして最も存在感が大きいのが在外・本土の中華系です。開発者とマイナー、ユーザーの関係が安定的になる可能性があります。世界中に散らばる中華系の送金需要は世界最大規模と考えてよく、この需要を取り込みさえすれば、Litecoinは潤沢なトランザクションを生み出し続けることになります。

Charlieが夏頃武漢を訪問したのも、Bitcoin政治に代表される複雑な状況下で、ステークホルダーとの関係を良好に保っておけば、それがLitecoinのユニークな強みになるという部分を狙っているはずです。そしてLitecoin Foundation自体もおそらく最も簡素で政治のない暗号通貨の財団なのではないかと考えられます。その分人は少なくエンジニアのコミュニティも薄いという側面もありますが。

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