Amazon Goの分析を(上)(下)構成で行います。(上)はAmazon Goがコンビニとどう競合するのか、どうコンビニを「カイゼン」したものなのか、そしてデジタルマーケティング上の意味を考察します。(下)では、Amazon Goがテック企業特有のエコノミクスに基いて展開されていることについて解説します。


Amazonが2016年末に発表したAmazon Goをついに正式ローンチしました。Amazon Goでは入場のゲートでアプリの画面を認識させた後は、買い物かごを持たずに好きなものをあなたのバックに入れて、チェックアウトできます。レジの長蛇の列に並ぶ必要がなくなります。

シアトルの一号店は1,800平方フィートのグロッサリーストアです。ソーダ、ポテトチップス、ケチャップなどの通常のコンビニと同じような品揃えです。Amazon Goを体験するための賑わいがすごいようです。

 

どんな技術を使っているのか?

この会計なしのシステムには、コンピュータービジョン、ディープラーニング、センサフュージョン等の技術が採用されています。

仕組みは自動運転に似ていると考えられます。センサフュージョンとは複数のセンサ、例えばレーザレーダや車載カメラなどから得た多くのデータを処理することで、単一のセンサからは得られない高度な認識を実現できるといいます。

Teslaの自動走行車がとても分かりやすい例です。画面の右側にあるのがフロント、サイド、後方に設置されたカメラであり、目まぐるしく物体認識を続けています。同時にレーザーレーダーのデータをリアルタイム処理しています。この処理には高度な演算能力が必要となります。

リアル小売への楔

米国では、消費者は自動車でハイパーマートと呼ばれる大型スーパーに行き一度にたくさんの物品を購買する傾向が強いです。現状のサイズのAmazon Goは徒歩が可能な都市圏への出店を目指しているでしょう。東京のような人口密度の高い大都市に実店舗で食い込めるようになります。

同時に店舗数の拡大すれば、Amazon Go店舗は商品の受取場所としても機能するかもしれません。顧客の近くに物流の拠点を設置したのと同様の働きをするはずです。

Amazonは高級生鮮スーパーWhole Foodsの買収で食品スーパーの領域への参入を開始しました。Amazon Goはコンビニと同じセグメントに進出が可能になります。Amazonは生鮮食品の宅配である、Amazon Freshも行っています。しかし、実際にはすべての需要を個別配達にブレイクダウンすることは不可能のようです。

人々にはふらっと寄って生じる購買意欲のようなものが存在しており、個々人が自分が何がほしいかを常に確信していないのです。

Amazonとアリババがリアル小売を飲み込もうとしている

コンビニ需要と人口密度

コンビニにおける需要は人口密度関係していると思います。コンビニの客単価は低いので、多量の客を呼び込む必要があります。その顧客に最適化された棚をPOSとハイレベルな物流網で作り上げることが、コンビニビジネスのキモです。多量の来店を見込むためには、おおむね周囲の人間の交通量が多くないといけません。コンビニエンスストアの商圏は昼夜で3,000人程度、500m以下にとどまると言われます。

United Nations Human Settlements Programme (UN-HABITAT)のサイトを利用して、北米、南アジア、東南アジア、東アジアの都市を比較してみました(かなりざっくりです)。いかは対象地域内の都市の人口数ランキングです。東京(圏)は都市人口数で最大です。米国だとニューヨーク、ロスがランクインしています。

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以下は世界の人口密度が高い国をビジュアライズしたものです。開発国(Developed Country)とアジア、アフリカ、南アフリカの新興国に人口密度が高い地域が広がっています。おおむねこの状況の主要因は都市化と考えていいでしょう。Amazonは北米の外の都市に対しても、将来的にはAmazon Goを投入するチャンスが大きくあるのが分かります。

実際中国のコンペティタであるAlibabaはAmazon Goと同様の無人店舗を拠点の杭州に設置していますし、完全にAmazon Goモデルを模倣したニューリテールスタートアップが誕生してもいます。

世界一の都市人口を誇る東京では、コンビニが築いた優位が高そうですが、現代の人々は最も顧客体験を重視します。Amazon Goやアリババの無人店舗の体験が東京の人をひきつける公算は高いでしょう。

デジタルマーケティング

Amazonのデジタルマーケティング上の財産は顧客の購買データです。利用者の属性情報に購買履歴が連なります。読書や購入物品、視聴動画・音楽などから顧客の性質を推測することができます。購買にデータには生鮮食品のピースが欠けていましたが、Amazon Goがその欠損を埋めていくでしょう。

あなたの購買にまつわるあらゆるデータを蓄積していることが、GoogleやFacebookに対しても、Amazonのとてつもないアドバンテージになっており、今後もその傾向は強まっていくでしょう。

最も注目すべき点はAmazonアカウントですべてを行える点です。その人がその人であること、その人がバックに入れて持ち去ったものが何かを、すべてアカウントを軸に処理しています。クレカのプラスティックカードよりも、運転免許証のような各種のIDカードアカウントよりも、Amazonのアカウントが有利な地位にあり、トラフィックを集めていきます。小売という実需を抑えながら、ペイメント、認証という必要不可欠なピースを掌握していくことを目指しているんです。

このまとめ記事に詳しいのでご参照ください。

“Amazon Everywhere” : 帝国はあなたの購買を完全制覇する

 

 

 


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投稿者: Takushi Yoshida

起業家&デジタルビジネスアナリスト。早稲田大学政治経済学部政治学科卒。ジャカルタで政治経済記者。APEC、ASEAN首脳会議でTPP、ASEAN+3などの地域経済統合をリサーチ。帰国後、米デジタルマーケティングメディアDIGIDAY[日本版]立上げ参画。2017年10月テックビジネス戦略メディアAxionを創業。

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