オリンピック型東京開発が失敗する理由:エクスペリエンスから都市をデザインする

最近は自動車に関してモビリティという観点が浮上しています。ライドシェアが最初のインパクトをもたらしましたが、自動運転車が都市を巡回するようになるというのが、次のシナリオなのです。モビリティ・アズ・ア・サービス(MaaS)という言葉が生まれています。人々がソフトウェアのようにモビリティを活用するタイミングが近づいています。

モビリティに関しては、自動車の所有が減る可能性があるという予測が目を引いており、一般メディアで日本の主要産業が衰退するというような文脈で語られています。実際、素材の進化、部品製造・組立工程におけるAIの採用、そして自動車にコンピューティングの力を与えることで、産業が水平化するのは不可避でしょう。自動車は「プログラム可能(Programmable)」なものになろうとしています。

カーボンファイバーがクルマをプログラム可能にする モビリティ競争の自動車産業

しかし、重要な観点はそこだけではありません。都市のユーザーである人間を中心に考える必要があります。人々に対しモビリティやトランスポーテーション(交通)をサービスとして提供するという新しい視点が、都市の劇的な変化をもたらすことになるでしょう。

グローバル都市化時代

国連は2050年までに世界の人口の3分の2が都市に住むと予測しています。都市居住に人々がシフトしていくことには数々の利点が指摘されています。あなたも満員電車に苦しんでいたり、自動車渋滞に悩まされていないでしょうか。この都市内の交通には課題がたくさんあります。

都市はグローバル経済のマザーボードになりつつあり、交通混雑とそれがもたらす温暖化ガスの排出を除いて、多くの人々にとって、都市に住むことはエキサイティングです。

OECDは人口1000万人以上のメガシティが2014年の28から2030年には41まで増加すると予測しています。特に急速に発展する新興国では交通密度と道路インフラに対する需要が増加するでしょう。例えば中国の車両数は、過去10年間で、2005年の3000万台以上から2015年には1億6000万台に増加しています。

中国の経験は東南アジアやインド、アフリカなどで繰り返されることになるでしょう。

Jakarta, by Takushi Yoshida

自動車を禁止することは今や頻繁に考えられていますが、このオプションは実際には都市開発をうまく助けないでしょう(私が住んでいたジャカルタでも同様の試みがされていました)。ドイツでは、最新型のディーゼル車を除いて、都市内の交通をすべて禁止を検討する都市があります。同時に、ドイツだけでなく世界中で電気自動車やドライバーレスカーが議論されています。

自動運転車のインパクト

自動運転車はとても大きな役割を果たすでしょう。

Boston Consulting GroupとWorld Economic Forumは10カ国27都市の5500人以上の消費者の間で定量・定性調査を実施しました。調査によると、回答者の58%が自動運転車に乗ると回答し、69%が部分的に自動運転車に乗ると答えました。世界100大都市の半数を占めるアジアの消費者が最も自動運転車に準備ができているといいます。

KPMGは自動走行車とモビリティサービスが、主にセダンのような自動車の所有意欲を低下させると予測しています。ライドシェアのようにボタンを押してモビリティサービスを利用することはいまや激しく、セダンと競合しています。米国での個人所有セダンの販売が、現在販売されている540万台から2030年にはわずか210万台に急落するとKPMGは予測しています。

これは駐車場という無駄なスペースを削減できる可能性を示しているとともに、一つの車両あたりの稼働率を高められる可能性があります。もしかしたらもっと人が移動したがるようになるかもしれません。そうなった後はまた新しい方策が必要にはなるでしょうが。

自動車禁止より都市交通デザイン

実際には自動車、列車、路面電車、バスなどのすべての要素が効率的に提供される輸送システムを構築することがはるかに優れたソリューションになるでしょう。

そのときに、マインドセットを転換する必要があります。

東京をミニチュアにして考えてみましょう。東京の通勤者の大半は満員電車に苦しんでいます。満員電車は電車事業者にとっては好ましいことです。輸送密度を高めることができるからです。しかし、一部の人々のやる気やクリエイティビティ、そして時間は失われています。電車を自殺の場に選ぶ人は少なくありません。彼らにとっては憂鬱の始まりを象徴するものが、満員電車なのではないでしょうか。これは都市にとって、そして都市が形成される根源的な理由である市民にとって、巨大なマイナスなのです。

したがって各事業者はお金の稼ぎ方を変える必要があります。日本の電鉄会社は電車で点を線にし、周辺の複合型の不動産開発などで面を開発するというビジネスを続けてきました。しかし、ハウジングの未来を考えるとき、このアプローチは変えないといけないでしょう。

ユーザーセントリックの都市

「点」「線」「面」ではなく、それらを統合した「網」、そしてユーザーエクスペリエンスから都市を作らなければなりません。現状の東京のオリンピック型都市開発にはこの観点が抜け落ちており、巨額の税金や政府債務を投入することには疑問があります。市民が求めているのはエクスペリエンスであり、ハコではありません。そしてIoT時代には都市のあらゆるオブジェクトがネット接続されデータを発します。AIチップはあらゆるデバイスにインテリジェンスを宿らせるようになります。あらゆるものが今よりスマートになるでしょう。

NVIDIAを脅かす「謎のAI半導体メーカー」

分断され競合する交通サービス提供者と不動産事業者が皆、インターネットドリブンな新しい都市計画の中で受益者になるようなインセンティブ設計が重要になります。もちろんこれは言うは易しなのは間違いありません。どの会社も利益を出すことが求められています。その従業員たちはボーナスを貰えるかを重要視しています。都市をめぐるあらゆる事象はたぶんに政治的です。一握りのプレイヤーのための短期的利益が、市民の長期的利益を簡単に無視します。

都市をスクラッチするのが最もクイックなアプローチだと考えられます。都市をソフトウェアのように構築する、ということです。この点、トロントのAlphabetによる都市開発は、ゼロから開始されますので、とても注目に値するものだと思います。

トロントで未来都市を建設するGoogle

参考

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