予測

  • スマートスピーカー市場は概ねAmazon EchoとGoogle Homeが制する。「人間の言葉でタスクを処理する」「人間の言葉の意味合いを掴む」などは2社が他者を大きく離している。AppleのSiriは人工知能開発やポストスマートフォンの競争から遅れてしまった。
  • スマートスピーカーにとってスマートホーム、エンターテイメント、交通機関(主に自動車)などとの連携がどれだけ滑らかか重要だ
  • Amazon Alexaは他のアプリケーションを実行するツールとしてポジションをとるGoogle Assistantはより総合的な質問や日常生活の情報収集など検索の発展として機能を占拠する
  • 人工知能 / 機械学習の能力が最終的な勝敗を分ける重要な差別化要因になる

論拠

Google HomeはAmazon Echoのリードに対しどこまで迫れるか、がスマートスピーカー市場における最も大きな問いだ。他のプレイヤーにチャンスはないのか?

Appleが5月の開発者会議で発表したHomePodは「高級感のあるオーディオ機器」としてのポジションを取りに来ている。高めのプライシングと高性能のオーディオ。「人間の言葉でタスクを処理する」「人間の言葉の意味合いを掴む」などの競争の主要なポイントからSiriが遅れを取っていることを暗に示している。

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Siriの開発メンバーは買収当初のメンバーが抜けており(一部)、Appleは人工知能研究所を設立し、昨年にはディープラーニングのチームを組成したが、2007年以降加速したディープラーニング開発の状況と比較すると、動きは遅いだろう。Homepodの狙いは、Apple Musicのユーザーに専用スピーカーを配るということであり、高いARPUを保証するAppleファンを逃さないようにすることである。

ほかのプレイヤーも先行する2社の強みに対して脆弱かもしれません。

AmazonはGoogleの3年前に市場に参入しています。「音声で物事を実現する」ことに焦点を絞りパートナシップを広げています。電機、自動車メーカーとの協業でも大きくGoogleAssistantに先行しています。2017年1月の世界最大級のエレクトロニクス展示会では、数多くのメーカーの商品がAlexaを搭載したことで話題を呼びました。

Google Assistantは検索をロジカルに進化させたものです。言葉の意味体系やものごとの関係性に関してはGoogleは知識体系を築いており、これがアドバンテージになるかもしれません。人間の質問やその意図の「理解」に関してはGoogle Assistantが優れていると言われています。

Amazonか築いたリードが大きいか、Googleが検索で培ったアドバンテージでひっくり返すか、興味深いところです。

eMarketerは、2017年内に3760万人(前年比128.9%増)がスマートスピーカーを利用すると予測した。同年中はAmazon Echoは70.6%のユーザーを確保し、Google Homeは23.8%というマーケットシェアを予測している。

スマートスピーカーは家のなかに最初に入り込むIoTデバイスでもある。ただし、モバイルはすでに家の中に上がり込んでいる。

以下は英国のデータだが、モバイルでのネット接続を「主に家の外」「家の外」に限定しているのは利用者の10%に過ぎない。Wi-Fi接続の可能性が高い「家と外の両方」は66%、「主に家の中」「家の中に限る」という利用者は24%に上る。モバイルのトラフィックの40〜50%は、電波ではなくWi-Fiで生まれている。March 2016, Andreessen Horowitz ”Mobile Ate The World“

Via Mobile is eating the world — Benedict Evans

英国営放送BBCの動画ストリームに対するリクエストの41%がスマホ(19%)とタブレット(22%)のモバイルでなされている(下図)。BBCの動画ストリーミングを電波環境で視聴すると通信費がとてもかさむことになるため、ほぼWi-Fi通信での視聴といっていいだろう。スマホがリビングルームに進出していることを意味している。デスクトップ、ラップトップ、そしてテレビで動画視聴してきたリビングルームにおいて、人々はスマホを有力な選択肢に入れている。

Via Mobile is eating the world — Benedict Evans

しかし、スマートスピーカーにはスマートホーム、エンターテイメント、交通機関を人々が利用する際のインターフェイスになるという側面がある。これらもモバイルに載せるのは超過機能になりそうだ。スマートスピーカーでの操作が期待されている機能としてはサーモスタット、セキュリティカメラ、ストリーミングボックス、スマートウォッチ、オーディオシステム、照明、音声・顔認識による施錠、スマートテレビ、音楽ストリーミングなどがある。今後家がよりコネクティビティを深め、スマートスピーカーなどのIoTデバイス同士の互換性が向上すれば、モバイルがリビング内で果たしている役割をテイクオーバーしていく可能性もある。

家の中の最初のIoTデバイス

スマートスピーカーはコネクテッドホームに最初に置かれるIoTデバイスと考えていいだろう。スマートスピーカーからさまざまなIoTデバイスに普及が進んでいくと仮定すると、他のハードウェアメーカーはAmazon AlexaやGoogle Assistantを搭載することを当然とみなすことになるだろう。コネクテッドホームの起点を抑えるのは極めて大きい。この場合、スマートスピーカーはデータ収穫の「トロイの木馬」になる。

ただし、スマートスピーカーの普及は始まったばかり。「WiFiを自宅内で利用する世帯」において普及率は8%に過ぎない。PC(90%)、スマホ(89%)、タブレット(65%)などには比べると依然として低い。スマートスピーカーとの連携が想定される、ストリーミングボックス/スティック(38%)、スマートTV(31%)の普及が先行している。※ComScore「Smarter and More Connected: The emerging landscape of IoT and connected devices」

Via ComScore「Smarter and More Connected: The emerging landscape of IoT and connected devices」

米国人はスマートスピーカーを習慣的な行動、エンタメ、ときに物品の購入に利用している。「一般的な質問」「天気」「リマインダー」「タイマー」「カレンダー」などが上位に入る。商品の注文は11%程度に留まる。この状況を見ると、GoogleはAmazonのリードにキャッチアップするチャンスは大いにある。AIの開発能力面ではGoogleに優位性があると考えられるからだ。

Via ComScore「Smarter and More Connected: The emerging landscape of IoT and connected devices」

Googleのインテリジェントには検索で培ったKnowledge Graphがある。人々が調べる事象を知識体系化に成功しており、音声検索の利用率も上昇しているといわれるので、より会話からユーザーのニーズを探っていけるようになると考えられる。

Amazonはスマートスピーカーの販路を自分自身で握っている。7月初旬のAmazon Prime Dayで最も売れたのはディスカウントされたAmazon Echo。Amazonは利益を見ずに低い価格で配れる。Echo Dotは49.9ドル。Amazonは自社eコマースプラットフォームでプロモーションをかけ、低めのプライシングでマーケットシェアを拡大できる。Amazonのスキル数は15000でGoogleの20〜30倍の水準でこれはパートナーシップの広さを示している。このアドバンテージは今後も大きく働く。

スマートホームや自動車、モバイルとの連携が重要になる。スマートホームのあり方は現在も模索が続けられており、少数のプレイヤーが支配的になるか、各社のデバイスのなかで統一のプラットフォームが生まれるか、とても戦略的な状況だ。

Amazonが2014年後半、Googleが2016年11月に参入して追う展開。遅れてきたApple、Samsungには機会が薄い可能性が高い。Appleがディープラーニングのチームを整えたのは2016年と他者から遅れをとる。そのSiriの開発者を迎え入れたSamusungにも音声認識や長期的なAI開発においてキャッチアップは難しいだろう。アリババも7月初旬スマートスピーカー「Tmall Genie」を発売開始している。AliGenie」という独自のAIアシスタントを搭載。企業規模や中国語の壁、あるいは中国のインターネットの壁に加えて、Amazon同様eコマースという販路をもつことがアリババに有利に働くかもしれない。

Via Alibaba

 

プラットフォーム断片化

スマートホームには「プラットフォーム断片化」という問題がありそうだ。さまざまなスマートホームデバイス、例えば、冷蔵庫、ドアノブ、照明など個々のデバイスにアプリケーションが必要になる。

台風の目であるThe Essentialの戦略はこの「プラットフォーム断片化」をテコにすることだ。この世界のモバイルデバイス8割に搭載されるAndroidの父であるAndy Rubinは、かつてAndroidがiOSを追走するのに成功したオープンソース戦略をスマートスピーカー / スマートホームに導入することだ。「全社が他社を排したエコシステムを構築したがっているが、消費者はSamsungの商品だけがほしいだけではない。多様性がほしい」とRubinはRecodeのカンファレンスで語っている。

Andy Rubin Via Essential

The Essential Homeはスマートホーム専用OS「Ambient OS」を載せており、オープンソースでAndroidと同じ開発プロセスをたどるという。Ambient OSにはAmazon Alexa、Google Assistant、Apple Siriなどを併用することができるとRubinは語っている。Androidには30%のAndroidデバイスだけが最新バージョンを載せてないというOS断片化の課題があるが、Rubinは解決策があると語っている。

結論

スマホの次へ

ユーザーをネット接続させ続けるさまざまなコネクティッドデバイスに、アプリケーションとして存在できなければ、価値を表現できない。モバイルで存在感のあるアプリであろうと、ユーザーがほかのデバイスで接続しているときに存在しなければ、かなり不利を食うことになる。

音声アシスタントにおいて重要な音声認識技術をとっても、グローバル企業は認識の精度をめぐる激しい競争をしている。マイクロソフトは昨年9月に誤認識率6.3%を達成。IBMは3月に誤認識率を5.5%まで落としマイクロソフトを上回ったと発表。さらにGoogleは5月に、誤認識率を1年前の8.5%から4.9%まで減らしたと発表。上記の企業はこの領域の研究者・エンジニアを軒並み囲い込んでいる。

音声の学習データの蓄積ではAmazon Echoで先行するAmazonと 音声検索を展開するGoogleが先行している。音声アシスタント普及以降、スマートホームに付く無数のセンサーデータを解析し、アクションする高いパフォーマンスのAIを提供するプラットフォームになりたければ、特化型チップの採用や巨大なコンピューティングパワーの確保、ディープラーニング研究開発などに莫大な投資が必要になる。鍵となるハイレベル人材は自身の業績を伸ばし、発表できる場にしか集まらない。

Written by 吉田拓史 / Takushi Yoshida

投稿者: Takushi Yoshida

起業家&デジタルビジネスアナリスト。早稲田大学政治経済学部政治学科卒。ジャカルタで政治経済記者。APEC、ASEAN首脳会議でTPP、ASEAN+3などの地域経済統合をリサーチ。帰国後、米デジタルマーケティングメディアDIGIDAY[日本版]立上げ参画。2017年10月テックビジネス戦略メディアAxionを創業。

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