プルーフオブステーク(PoS)は本当の解決策なのか?(上)

プルーフオブワーク(PoW)マイニングの副作用に光が当たっています。世界中の寒冷かつ余剰電力のある地域にマイナーが殺到し、電気使用量を押し上げているからです。

今週注目されたのは、マイナーがGPUの価格が高騰させているせいで、天文学者等の科学者が研究用のGPUを確保できない事態に陥っていることです。NVIDIAはデータセンター利用できるGPUを限定しており、特に資金力のない研究者、教育機関などはデータセンター経由のGPUコンピューティングへの機会が絶たれたところに、低価格帯のグラフィックカードの価格高騰が重なる事態になっています。

プルーフオブワーク(PoW)は非効率です。マシンの計算力の測定単位である採掘速度(ハッシュレート)は2.0~2.5ExaHash/sという驚異的なレンジに達しており、この計算力を叩き出すために大量の電力が消費されています。しかもこの費やされた計算力と承認される取引の量には相関がありません。どぶに捨てていると言っても過言ではありません。

Marko Ahtisaari(CC)

PoWの画期的な点はネットワークにおける正しい合意形成を問う「ビザンチン将軍問題」を解いていることです。過半数の計算力を握り正しくない合意を導き出そうとする”51%攻撃”をするよりも、採掘に参画して一定の確率で報酬をうけた方が割に合います。現状、マイナーはこのエコノミクスに概ね逆らっていません。

PoWのトランザクション処理力には明確な限界があり、これがいわゆる”スケーラビリティ問題”を生んでいます。ビットコインはPoWを改良するのではなく、PoWを基層としてその上のレイヤー(階層)を開発していくことに舵を切っています。

プランB Proof of Stake

裏を返すと「ビザンチン将軍問題」を解ければいいのです。それももっとPoWに帯びるおびただしいコストを削減した形で達成したいと考えるのは自然です。Ethereumは、特定の条件が満たされたときに実行されるスマートコントラクトを実行するために開発されました。これはEthereumにはビットコインよりももっとトランザクション処理能力を高速化しないといけないことを意味しています。

すでにEthereumのトランザクション処理はビットコインを上回っており4倍のレンジで推移しています。

Via FLIPPENING WATCH

それでも十分ではありません。現状は”CryptoKitties”の利用が殺到しただけで、Ethereumネットワークはうまく動かなくなってしまうのです。

ということで、EthereumはPoSの採用に動いています。PoSは賭けられているステークに基いた確率で報酬を獲得できる仕組みです。表現を変えてみましょう。”ブロックを生成できる確率がコインの持ち分に多さに応じて上昇する”仕組みです。つまり”持てるものに有利な”仕組みです。

PoWに比べてブロックの承認プロセスが非常にシンプルで、ブロック生成時間を短縮することができます。これはマイナーが採掘に利用するハイパフォーマンスなコンピュータを必要としないので、地球にやさしい、と表現されています。

PoSは暗号通貨コミュニティにとって大きな関心領域でした。最初のPoSベースのコインは2012年に作られたPPCoinで、その後も議論が続けられ、Ethereumも導入しようとしているのです。

PoSは”モノポリー”

PoSはどのようなエコノミクスを生み出すでしょうか。PoSでは、多くのコインを持っているユーザが取引の検証プロセスにおいて悪意のある行動を起こす動機がない、と仮定できます。PoSでは金持ちは金持ちになります。お金持ちが次のブロックを生成する人になれる確率が高く、そこでさらにお金持ちがさらにお金持ちになります。

しかも、豊かさを増していくお金持ちは特にリスクを負いません。コインをホールドしているだけです。PoWではマイナーはASIC、電気代、そして規制当局の機微などのコストを負担した上で採掘報酬を得ていますが、PoSでは大量保有者は何もしないでいても、ステークした残高に応じて鋳造(Minting)報酬を得ることができるのです。

これはPoSで表現される経済圏がボードゲームの”モノポリー”のように大口保有者が”独占”を成し遂げていくゲームになる可能性に触れています。現行のブロックチェーンエコシステムは法定通貨との交換レートに依存していますが、小口保有者は利の薄いPoS通貨から出ていくことになる可能性が高いです。

NEMという”自然実験”

ほぼPoS通貨と呼んで差し支えないNEMこそ、PoSの導入で起きる何が起きたかの自然実験です。もちろん細かい条件は違いますが、比較検討することには、十分な価値があるでしょう。NEMはPoI(Proof of Importance)と呼ばれるコンセンサスアルゴリズムを採用しています。これは重要度スコアに基いてコインを分配する仕組みですが、実際には保有量が一番大きな要素であり、特に初期からの保有者と大量保有者(この2つはほぼ一致していると見ていいでしょう)に有利なのです。NEMが採用するPoIはPoSの改悪と言ってもいいと主張されています。

NEMでは暗号通貨界隈の新規参入者が拡大した2016年5〜6月と2017年12月〜2018年1月の期間に大きなPump&Dumpが起きています。推測に過ぎませんが、上記の状況を知らない新規参入者を巻き込んでこのPump&Dumpが演出された可能性があります。上述したとおり、NEMの設計が大量&初期保有者にとても有利なので、この値動きが誰に利したかは推して図るべきでしょう。

 

もちろんこれがPoS通貨で必ず起きる典型的行動と決めつけることはできませんが、一部の大量保有者には新規参入者を巻き込んでいくインセンティブがあるのは明らかです。大量保有者が増やし続けられるコインの法定通貨建てレートを維持したり、場合によっては嵩上げするのは、多くを知らされていないフレッシュマンの役割だからです。

続きは(下)で検討してみます…。

参考

A Proof of Stake Design Philosophy(Vitalik Buterin)

Nemmanual “POIとは何か?”

@rest256 “NEMのPoIはPoSの改悪である”

田中コイン研究所 “PoSを採用する暗号通貨に未来はあるのだろうか”

Github ethereum wiki Proof of Stake FAQ

Zoom”イーサリアムに導入予定。プルーフオブステークのメリットとデメリット”


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