ビットコインの100万超えが世界をどう変えるか?

ビットコイン価格は1BTC100万円を超しました。価格そのものに関する情報はチャートを眺めていただければいいと思います。ここでは、ビットコインの今後について予想をめぐらしましょう。「100万円」がエコシステムどんな影響をあたえるのか? 4つの影響があると思います。

1. マイナーのロイヤルティ

高いビットコイン価格はマイナー(採掘者)の収入を保証します。マイナーがマイニングの報酬として受け取れる新たに生成されたビットコインは、半減を繰り返し最終的に増加を完全にストップする仕組みになっています。このためビットコインの価格が一定の場合、マイナーの収益は下降していきます。同時に他のコインのマイニングの方が儲かる場合、彼らはビットコインのマイニングをヤメてしまう可能性がありました。

ビットコインの価格上昇とともに、マイナーがマイニングに使う費用も拡大しています。マイナーは、他のマイナーよりも早く特定のナンス(ハッシュ値)を見つけることで、新しいブロックを生成し、手数料と生成報酬を受取る権利を得ることができます。マイニングに投入されるハッシュレートは上昇を続けていますが、マイナーは競争をしながらトランザクションの正しさを確認しており、ハッシュレートの上昇は利用されるコンピューティングパワーとその稼働と冷房に利用される電気代の上昇を意味しています。PoWとは皆の力を合わせるゲームではないのです。

この結果、マイニングプール運営者への集権化(下図)が起きており、ビットコインが抱える政治問題の根幹要因になっています。

分散を実現しながらバリデーションを実行する方法として、コストの高いプルーフオブワーク(PoW)の代替案がたくさん出てきましたが、現状確からしいものはありません。Ethereumが導入を検討するプルーフオブステーク(PoS)も動かさないとわかりません。

長期的にはマイニングのコストを落とし、マイニングを分散化する方法を検討するタイミングが来ると思われます。これらはひっそりと準備されていきなりデプロイされてもおかしくありません。

2. 当局の対応

さて、法定通貨の所有者である当局がどう対応するか。暗号通貨の取引額の大半を、日本人が占めています。低い預金金利や高額な手数料を課す投資信託のユーザーエクスペリエンスを鑑みない金融を利用せざるを得ない日本人にとって、現状のビットコインが叩き出しているリターンは素晴らしい。この状況は日本の金融機関には余り愉しくないに違いないでしょう。

日本の金融機関には規制当局の距離において優位性があります。日本の金融当局と金融機関は人材がぐるぐる回っており、金融機関を規制する法律の草案を金融機関出身者が書いているということが珍しくありません。

だが、森信親・金融庁長官はかなり違うポジションを取っており「金融サービスはユーザー体験を最重視するべき」と言っています。日本の金融機関は規制の力でビットコインを封じ込めたいと考えているはずですが、現状の金融庁のポジションがどう影響するかわかりません。

ビットコインは基本的には価値の貯蔵、すなわちゴールドであることと大ぶりの送金において利用価値があるだけです。それだけです。ビットコインの取引額は円の取引額に比べれば極めて小さい。いくつかの小売店では決済が導入されていますが、実際にはbitFlyerのような会社が取引を保証することで成り立っています(ビットコイン本体のトランザクション確定は時間がかかります)。ただし、ここにはクレカ決済などにバンドルされている非効率的なレガシー金融インフラを迂回できるという利点があります。

実際にはビットコインのコア開発者が予定する改良がうまくいって初めてさまざまな銀行機能を個人のもとに渡すシステムとして機能するはずです。これは後で触れます。それよりも速いのはアリペイ、Wechat Payのような「デジタルウォレット」です。これにより各種の支払い、送金、預金、パフォーマンスの高い投資信託への投資などを行える。個人から見ると、こちらの方がモバイルで済ませられて安くて速く便利です。

伝統的機関の信用供与はあと10年 分散型デジタル信頼の台頭

現行はウォレットの中身が法定通貨(フィアットカレンシー)ですが、将来的には暗号通貨に置き換わる方が、ユーザーである市民にとっては便利かもしれません。

ただし、国家が管理通貨制度という超特権を手放せるのでしょうか。私はこの記事で検討しています。国家と金融機関の深い関係は簡単に解消できるものでしょうか。こういう観点から、かつて堀江貴文氏に向けられたような感情的なアタックが起きるかどうかは「日本がどれくらいの遅れで済むか」を左右しそうな気はします。

中国ではICOや取引所を禁止したものの、暗号通貨の流通を止めることは出来ませんでした。日本でも規制すれば、キャピタルフライトが起きる可能性があります。規制はあまり意味が無いかもしれません。

3. ステークホルダーの複雑化

ビットコインはすでにステークホルダー間での意見の相違により、SegWitの実装の遅延を経験していますし、以前としてSegWitのブロックを生成していないマイナーが存在するのが現状です。先に触れたビットコイン先物取引が象徴するように、今後は金融機関、ファンドなどが本格的に投機に参画することが想定できます。

コア開発者、マイナー、一部のユーザー、取引所などの事業者がビットコイン技術開発において中心の円を形成し、金融機関のプレイヤーや個人投機家などはその技術開発には興味を示さずに中心円の周辺に位置すると思います。ただし、これまでもそうであったように周囲の人たちが価格に影響をあたえると、ゲーム自体が変化し、ステークホルダーに生じるエコノミクスが変化するのです。

昨今のビットコイン政治は、このステークホルダーの多様さに振り回されている気がします。各々が置かれた状況やビットコインで達成したい目的が異なるのです。この多様なステークホルダーたちをうまくガバナンスする必要性がより高まっています(ときには分離して切り出すことも検討しないといけません)。

4. ユーザーエクスペリエンスの向上の必要性

ビットコインというソフトウェアが今後拡張していくにあたり、アプリケーションにおいて高いユーザーエクスペリエンスを達成しないといけません。スティーブ・ジョブスがMacやiPhoneで高いユーザー体験を達成できたのは、垂直的な意思決定の仕組みがあったからです(ジョブスが決めたことに従うという)。これはビットコインのコアがもつ価値観とかなり相反するでしょう。

金融システムや自国通貨がしっかりしていない開発途上国の方が、暗号通貨採用の利点が大きいはずです。そのときに、ビットコインというオープンソース・ソフトウェアの基盤に載ったアプリケーションはとても使いやすい方がいいと思います。そうするとネットワーク効果が起きて、ビットコインや園周辺の決済用暗号通貨の利用が促進されると考えられます。


結論

人々はビットコインを手にしたいま、新しい大ぶりの決済と価値の貯蔵の手段を得ました。しかし、人々がどう使うかは別の話です。大多数の人はその価格だけに注目しています。しかし、知るべきことはたくさんあります。

まず、暗号通貨取引所を疑わないといけません。取引所は市場としての理性を持ち合わせていません。市場のプレイヤーがまだ十分に賢くありませんし、一部の人間が情報優位を築いている現行の金融市場と余り違いがありません。システム取引で稼いでいる人たちがいますが、彼らの手法は金融市場で活躍するクオンツファンドらが採用する手法とはパフォーマンスには遠く及ばないでしょう。

あなたのコインを取引所においておくのは暗号通貨を保持している意味を薄めます。それは取引所のデータベースに記録されているという状況であり、あなたの手元に暗号通貨を引き寄せたことになりません。ビットコインはあなたが独立していることを示す、そういうお金なのです。

ビットコインの本質的な変化は技術側で起きています。ビットコインが「どう世界の役に立つか」「そもそも何であるか」という議論が必要だと感じています。Axionでは来週以降、わかりやすい暗号通貨の解説を予定しています。どうぞお楽しみに。

 

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