“Facebook大増税” メディアと広告主はどうする?

Facebookのマーク・ザッカーバーグは先週、ブランドやパブリッシャーよりも友人や家族の投稿を優先すると説明しました。「人と人をつなぐこと」を優先する、そのためにユーザーの滞在時間やいくつかの指標が減衰することをいとわないと説明しています。この考えを反映したアルゴリズムは今週から適用されているようです。

これまでの経緯を辿ってみましょう。FBはコンテンツを流通させるプラットフォームとして成長してきました。猫とフードに代表される「バイラルメディア」のコンテンツがFBのトラフィックを拡大させて来ました。その頂点が世界中でバイラルを巻き起こしたBuzzfeedの「What Colors Are This Dress?」でした(詳しくは以下の記事)。2年前のデジタルメディアは、どれだけFBでウケるかを重要視していたのです。

いまやメディアそのものを飲み込みはじめた巨人・Facebook :唯一無二のグローバル拡散インフラ

つまり、パブリッシャーが作るコンテンツはFBの重要な力の源だったのです。その力を減らしていくという決断がされました。なぜか?

  • コンテンツ消費の急速の変化。コンテンツ消費が急速にユーザーがつくったコンテンツ(UGC)へと移行しています(なぜか日本だとCGMって呼ぶようです)。ピュー研究所などの調査によると、人々にはいわゆるパブリッシャーや政府系機関、企業のつくる情報より友人の情報を信用する傾向が高まっています。Instagram、Twitter、Snapchatなどのその他多数のメッセージング、カメラアプリの隆盛をみてもその傾向が把握できます「人と人」を動画などのリッチコンテンツを使って実現するのがトレンドです。FB初代CEOのショーン・パーカーもピアツーピアという技術を活用したアプリケーションで音楽産業を震撼させた人物だったりします。
  • ロシア諜報機関騒動。ロシアの諜報機関がFBを主戦場にして、米大統領選挙で工作を行ったことが明らかになりつつあります。米国のトラディッショナルメディアや政府機関などがこの件をめぐってFBに圧力をかけ続けています。
  • フェイクニュース。選挙期間中、フェイクニュースがFB、Twitterで流通しました。フェイクニュースサイトは広告を買ってニュースを露出し、集めた群衆のPVを広告でマネタイズすることに成功しており、ビジネス的には悪くなかったようです。しかし、ニュースが「ローマ教皇がドナルド・トランプを支持した」という内容だったわけです。この件もFBは非難を浴びました。

広告枠飽和、単価拡大を目指す

さて、見方を変えると、今回の決定は、FBがパブリッシャーやブランドに対して「交通税」を上げますよ、と宣言しているのです。FBは新しいアルゴリズムはペイドポストには影響しないと説明しているようですが、CPM(表示単価)は上がると言われています。「人と人が結びつくアプリケーション体験は価値が高いので、そこに広告を挿し込むには高い金額をつぎ込んでもらいたいのです。よろしくお願いします」という様子でしょうか。

FB側の状況を整理しましょう。FBの先進国のユーザー数は頭打ちになっており、またそのユーザーに関しても活動が減ってきているとも言われます。このため表示できる広告枠に限界が見えてきて、収益成長が鈍るという見方をFBのCFOは一年前から言ってきたわけです。

その解決策が動画です。ニュースフィード上で動画を優遇し、ブランドに対して動画広告を勧めることで、平均単価を上げる取り組みをしています。そして今回の宣言により、オーガニックのリーチやエンゲージメントが先細ることが想定できます。「もしもっとリーチやエンゲージメントが欲しいなら、広告を買ってください」と暗に示しているわけです。

パブリッシャーとブランドへの影響

さて、パブリッシャー(いわゆるメディア)の状況を整理しましょう。FBからブリーフィングを受けた米国のパブリッシャーによると、アルゴリズムがユーザーがシェアしたり深くエンゲージしたコンテンツに傾斜点を与えれば、偽情報や過激なコンテンツの流通を減らせると、FBは見込んでいる、ということのようです。

‘We’re losing hope’: Facebook tells publishers big change is coming to News Feed

そのアルゴリズムが走って、その結果が明白になってからでないと判定できませんが、いわゆるFBでトラフィックを稼いできたパブリッシャー(日本ではなぜか『分散型メディア』と翻訳されている。誰がしたのだろう?)は厳しい状況に直面する可能性があります。下の記事で触れたようなFBともに成長したメディアには戦略変更が望まれる状況です。あるいは高騰するかもしれない広告費をもっとつぎ込んでも、儲かる仕組みをつくるか、です。FBに依存するメディア事業者はたくさんいるのです。

次がブランドです。ブランドはFBをペイドメディアと捉えてきており、広告商品として競争力においてFBは依然として強いポジションを取れているはずです。ID(識別子)によるデモグラ情報とユーザー行動情報の管理、セルフサービス型の広告買い付けシステムなどが、Google以外を圧倒しています。またトラフィックや利用時間に関してもFacebookはブランドが欲しいものを持っています(下図)。企業が運営するオウンドメディアは、投稿の宣伝をするためFacebookに依存しています。

反応としては、まず歓迎が考えられそうです。ブランドとしてはノイズが減って自分の広告へのアテンションを稼ぎやすくなる可能性はゼロではありません。「テレビのように整然と管理された広告スペースを購できるようになる」。こういう認識が大口顧客にはあるかもしれません。

しかし、非難もあるでしょう。「値上げ」が起きれば、ブランドは深く他の選択肢を検討するのは間違いありません。動画広告の導入ですでに単価ベースの値上げが起きており、今回の措置でさらに単価は上昇を見込んでいます。

Facebookの打った一手の結果は、今後明らかになるでしょう。未来に対して最も影響力があるのは他ならぬユーザーです。

Photo by Brian Solis

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