先週から暗号通貨市場が大暴落をしています。2月6日13時時点で昨年11月以来で初めて7000ドルを割り込みました。12月下旬の最高値19343ドルから約64%の下落です。

気が気でない人も多いのではないでしょうか(私もそうです)。先週ポストした「ビットコイン”価格”の歴史」を読んでいただければ、こういうことが繰り返されてきたのが、暗号通貨の歴史なので静観していればいいのではと考えます。

【初心者ガイド】ビットコイン”価格”の歴史

暴落は暗号通貨に限らず、本稿執筆時点(2月6日13時)の段階で、米国のメルトダウンの影響が日本の他アジアにも伝わっています。世界中の投資家がリスクオフを敷いているような状況です。日本の株式市場は日銀の金融政策や年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)が支える形で、実体経済の状況とは関係せずして、証券市場は好調を「表現」してきました。これがどうなるか?(私もAxionというスタートアップを運営しているので、日本の証券市場の状況にはとても注意を払っています)…。

暗号通貨自体のネガティブ要因は取るに足らない

暗号通貨をめぐる状況に関しては、私は依然としてポジティブです。まず悪い要因について見ていきましょう。

日中韓インド欧州等の世界各国の当局の出方が気になります。

テザー問題はCFTCが調査を開始したので、テザーとビットフィネックスには悪い結果がもたらされそうな雰囲気です。テザーに関しては時価総額が23億ドル程度で、ユーザーがテザーをビットコイン等に変えてしまえば、兌換するべき米ドルをもっていないテザーと流通させたビットフィネックスの責任で終わりです。コインチェックハック事件も、販売所の提供する太いスプレッドで獲得したFiatを顧客に返せば決着はつきそうです。パニックが伝播して取り付け騒ぎが起き、コインチェックの経営状態にダメージがあれば、多くの投資家の暗号通貨をめぐる”気持ち”が沈んでしまいそうです。

法定通貨建て取引所

もう一度、取引所と暗号通貨の関係、あるいは法定通貨建ての価格とブロックチェーンのユースケースの関係を整理してみましょう。MITメディアラボ所長リエゾン(金融暗号)の松尾真一郎氏は、今回のコインチェック事件を契機にビットコインと取引所のあり方を問い直すブログ「Satoshiが注意深く設定した世界の境界線」をポストしました。

Satoshi Paperでは、様々な技術的実現方法とその自己評価が書かれているが、基本的には上記の表現を超えたことについては、何も主張していない。つまり、Bitcoinは、Trusted Third Partyの存在を仮定しない二重支払いを防止するPayment(支払い)システムだ。これ以上でも、これ以下でもない。この表現は、極めて注意深く選ばれている。

松尾氏はSatoshi Paperが提案しているものは、Payment(支払い)Systemに過ぎないと指摘し、BitcoinのPaymentだけでは多くの人や国家は目標を達成できず、フィアット通貨に戻す形でのSettlementを事実上必要としていると指摘しました。それが、取引所です。

SatoshiペーパーにはCurrency(通貨)という単語は使われていない。Trusted Third Party(信頼される第三者)なしのPaymentというのが、Satoshiの意味しているところであり、読み手がSatoshiが意味するよりも多くのものを期待しているのが現状である、と松尾氏は指摘します。ただし含みがあるようだ。「Satoshi Paperのトラストモデルを考えた時、全てのやりとりがBitcoinのみで行われる、つまりその系の中で全ての物事が全て完結するのであれば、Cashとして考えてもいいという思想が少しにじみ出ていると言える」。

松尾氏はとても興味深い提案のようなものをしています。それはブロックチェーンのみで「お金」のエコシステムを築くのが理想的だが、現状の世界のなかで成り立たせるためには取引所のような外部機関は失えないというジレンマに関係しています。

BitcoinのパブリックブロックチェーンプロトコルはPaymentの情報が正しく処理されることについてはある程度の確からしさを提供しているものの、現実の世界のSettlementをするには、取引所などのSettlementの機能をもつ外部機関を必要としているからである。また、多くのブロックチェーンプロジェクトは、事実上取引所が存在することで、マネタイズしビジネスとして成立している。逆に取引所が存在しない世界だと、現在のような多くのプロジェクトはそもそもスタートしないかもしれない。もし、現実の世界とのインタフェースを持ちながらビジネスエコシステムを作りたいのであれば、ブロックチェーンエコシステムの安全性の議論として一体として考えないといけない。マネタイズの観点で、「現在の」ブロックチェーンは単独では生きられないのだ。

現時点で、セキュリティの観点でブロックチェーンを切り離したいのであれば、取引所無しに全ての活動(税金から、警察や自衛隊の経費、全ての公的活動など、エコシステムを維持する全ての費用)を、ブロックチェーンで管理し、その暗号通貨で賄う必要がある。将来的には、そういう日は来る可能性はあるが、現在の技術とトラストモデルの設計ではそうなっていない。

経済圏は成立するのか

もうひとつとても興味深いブログポストを読みました。@indivi_0110さんの「投機を経て暗号通貨は経済圏を創出できるか?」です。暗号通貨の経済圏の発展にとって投機のフェイズは避けがたいもので、それが暗号通貨自体の流動性の拡大につながるかどうかで経済圏が成立するかどうかが確定するという趣旨です。

『A Peer-to-Peer Electronic Cash System』を謳いつつも、現時点では構造上、大きな価格変動を免れることはできず、法定通貨との微妙な関係性によって独立独歩も難しい状況です。これはスケーラビリティの問題と同じで、ビットコインが最も人気のある暗号通貨であるために、ビットコインが最初に直面しているだけであって、本質的に全ての有望な暗号通貨がいずれ抱えることになる問題です。(中略)

暗号通貨であれ法定通貨であれ、それが通貨であり他の通貨との売買が市場で行われる以上、他の通貨に対する強弱が意識されるのは当然のことです。ただし、経済圏に一定の強度があれば、その意識の度合を減らすことができます。例えば円経済圏やドル経済圏では、一般人が他の法定通貨に対する自国通貨の強弱を意識することはあまりありません。

そして@indivi_0110氏はより現実的です。

国内外を問わず所謂ビットコイナーの中には「BTCの枚数が重要なのであって、法定通貨建ての価値は重要ではない」という旨の発言をする人がいますが、別に彼らはビットコインを盲信しているわけでも狂っているわけでもなく、仮に暗号通貨市場が崩壊したとしても、当面の生活には困らないだけの資産を持っていたり、安定したキャッシュフローを生み出すだけの十分な能力を有していたりするが故にポジションを取れるようになっているだけです。

暗号通貨経済圏の創出には「ビットコインの熱狂的な支持者ではあるが、ビットコインの価値がゼロになっても生活には困らない人々の行動」がキーファクターになります。

私の経済圏へのアプローチ

私がビットコイン / ブロックチェーンに興味を持つようになった理由のひとつとして、メディアの収益化でコンテンツ課金を成立させるための探究でたどり着いた、というのがあります。私は2015年〜2017年にメディアビジネスやデジタルマーケティング業界の業界メディアであるDIGIDAYの[日本版]の立上げに参画しましたが、現行のデジタル広告、アフィリエイト等が形成するエコノミクスのなかでは、人々は良いコンテンツに出会い学習することが難しくなると考えていました。

そこで暗号通貨の支払い・決済が役にたつのではないか、という仮説がありました。すでにSteemitとYours等の先行事例があります。

仮想通貨のマイクロペイメントはコンテンツ産業を救う

私自身がブロックチェーンプロジェクトを開始するのは余り現実的ではありません。多くのチームは開発者をリーダーに据え、ほとんど開発者だけのチーム構成をしています。だから、コンテンツ消費のUXを高めるためにたったいま形成されつつあるブロックチェーンエコノミーの上に載ったサービスを作ることを目的にしたいと思いました。

ブロックチェーンが生み出す新しいエコシステムと古くから人間の活動、組織・機関をブリッジし、検索がウェブと一般の人々を結んだように、ブロックチェーンエコシステムのなかに組み入れるようなサービスを作りたいと考えています。

私は貧弱ですが経済学のバックグラウンドがあるので、エコシステム上に生じるエコノミクスを見極めてビジネスを作れるのではないか、と思います。頭のいい人たちが基層部分を作り出すことに熱中していますが、今後は彼らが作り出したプラットフォームの上でサービスを生み出す機会が現れるはずです。これが私のエコシステム・経済圏への貢献になるのではないかと思っています(このブログのタグラインも「Quest on Connected Economy[接続経済の探究]」なんです)。

 

 

 


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投稿者: Takushi Yoshida

起業家&デジタルビジネスアナリスト。早稲田大学政治経済学部政治学科卒。ジャカルタで政治経済記者。APEC、ASEAN首脳会議でTPP、ASEAN+3などの地域経済統合をリサーチ。帰国後、米デジタルマーケティングメディアDIGIDAY[日本版]立上げ参画。2017年10月テックビジネス戦略メディアAxionを創業。

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