分析と予測

  • SnapがIPO以降不調であり、市場が同様のアプリに対して厳しい見方をし始めている。Musical.lyもIPOを探るよりはM&Aでのイグジットを目指すのが現実的と判断したと考えられる。
  • Instagram、Periscope、Vineなど近年の米国の画像、動画関連モバイルアプリ運営企業は概ね、先行するソーシャルアプリ企業にM&Aされる傾向が強い。先行者が広告事業で先行しており、技術基盤などを保有しているのでシナジーがあると同時に、両者にとって競争することにメリットが薄い
  • BATの3強の次につけるToutiao運営がMusical.lyを買収した事案はクローン側がオリジナルを買うという画期的な出来事。先週テンセントがSnapの株式を10%超取得したことを含め、今後も資本面で米中のテック企業が交錯する事例が増えていきそうだ。

論拠

今日は日間アクティブユーザー1.2億人のニュースアップ「Toutiao(今日頭条)」を運営するByteDance(字節跳動)は「Musical.ly」を買収したと発表した。買収額は8億ドルから10億ドルと関係者は語っている。ByteDanceが展開する「TikTok」はもともとMusical.lyの中国版クローンとして開始したが「中国のクローン側が米国のオリジナルを買収した」ことになった。

「まっつん@中国メディアリサーチ(@Kiki_brero)」によると、Toutiaoは以下の用な特徴をもっている。とてもわかり易いためそのまま引用する。

こちらのブログに詳細があるので、ここではざっくりまとめると、Toutiaoはスマートニュースやグノシーを数十倍巨大なショッピングモールにしたもの。ByteDanceはTikTokというMusical.lyに酷似した動画アプリを提供している。TikTokは日本でも2016年にリリースされており、一定数の中高生のユーザーを獲得しているようだ。DeNAのSHOWROOMも四半期で、ざっくり24億円の売上を計上し単月黒字を達成しているようだ。10代向けの動画セグメントは中国と比較すると辛いが、日本でもなかなかのスウィートスポットになっている。

現状はDonutsの運営する動画コミュニティアプリ「MixChannel」が10代向けでいいポジションを取っているはずだが、前述のSHOWROOMなどの後発が縦型動画などを採用し追いかけてきている。10代は極めてダイナミックなユーザーであり大移動を繰り返すので気が抜けない。

Via donuts

musical.lyでは、ユーザーはセットされた音楽と同期するクイックビデオを録画できる。若いユーザーはセットした音楽に合わせてダンスしたり、口パクをするなどの遊び方をする。上述のアプリともども、このようなフィーチャーによりFacebook、Instagram、Snapなどとセグメントを分けてきた。

Via musical.ly

Snapの減速

musical.lyがバイアウトに進んだ背景にはSnapの減速があるかもしれない。今春の鳴り物入りのIPOだったSnapのQ3はかなりシビアな結果で、大赤字が続けば、上場し続けることもかなわなくなるだろう。FacebookがSnapのフィーチャーを容赦なくコピーする戦略をとり、Snap化したInstagramが、Snapが集めるつもりだった広告予算をかき集め急成長を遂げている。

Snapchatの決算が最悪  Facebookのコピー戦略奏功

もともと米国ではM&Aのイグジットがメインで、Snapよりユーザー基盤が小さいmusical.lyのIPOをめぐる状況は厳しさを増していたのは想像に固くない。

スケール&収益化の壁

またmusical.lyのようなアプリは収益化と収益のスケーラビリティを確保するのが難しい。デジタル広告のメカニズムは巨大なユーザーベースをもつプレイヤーに対して極めて優位に働きをしやすい。

Instagram、Periscope、Vineなどの単機能に集中した画像・動画アプリはすべて、大手プラットフォームへの事業売却を選択している。例えば、Periscopeの場合、ひとつのライブストリームの視聴者数が少ないので、マスマーケティングで広告買い付けをしてきたマーケティング部門の人にとって「わかりやすい」広告商品の開発に苦労する。Instagramももし単体で事業展開していれば、広告ターゲティングの鍵であるFacebookのデモグラフィックデータ、トラッキングデータを持たず、また自身でセルフサービス型広告買い付けシステムを開発しなければならず、いまのような成長は望めなかっただろう。

巨大アプリ運営者に買収されれば、当面の収益化の問題をスキップすることができ、ユーザー誘導や技術支援、広告オークションの設計などで収益成長をスケールさせることが容易になる。

ひとつ道があるとすれば、それはコマースとの融合だ。人々が購買の前に商品の情報を集める手段が多様化しており、インフルエンサーによるインスタグラムライクな画像やライブ動画で納得いく情報を確保し、直接コンバージョンする行動がモバイルネイティブの購買行動として定着している。

Via Alibaba

タオバオ(淘宝網)の動画ストリーミングサービス「」は2016年3月から配信を開始した比較的新しい機能だが、「2時間で3億円相当を売り上げる」インフルエンサーを生み出している。

同型アプリの欧米ユーザーを獲得

今回の買収のような事例では、中国企業はオリジナルアプリの買収により同型アプリの欧米ユーザーを獲得できる利点がある。近年、チャイナマネーは米スタートアップエコシステムで重要な役割をになることがあるが、金融市場は米中のテックジャイアントの時価総額を膨れ上がらし、ジャイアントは寡占市場から素晴らしいキャッシュフローを得ている。テンセントのSnap株取得など今後はより規模感の大きな資本の動きが、欧米と中国の間で増えてくる可能性がある。

※この記事は中国の勃興するAI開発に関するもの。ToutiaoのAI活用にも触れている。

台頭する中国のAI:巨大企業が牽引する「AI Everywhere(无处不在)」

参考

eye-catch photo via The University of Nottingham

投稿者: Takushi Yoshida

起業家&デジタルビジネスアナリスト。早稲田大学政治経済学部政治学科卒。ジャカルタで政治経済記者。APEC、ASEAN首脳会議でTPP、ASEAN+3などの地域経済統合をリサーチ。帰国後、米デジタルマーケティングメディアDIGIDAY[日本版]立上げ参画。2017年10月テックビジネス戦略メディアAxionを創業。

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