さようならトレーダー、こんにちは機械学習

野村証券の初代外国為替部長を務めた大柿敦郎氏と、JPモルガンの為替オプショントレーダーだったダミアン・ロー氏がAIを使ったヘッジファンドを来年1月にも始める、とBloombergは報道している。

ファンドはシンガポールで日本内外のお金を集める。同社はNVIDIAがシンガポールでスタートアップ創業支援をシンガポールで行っており、その認定第一号だ。新会社がクオンツを採用したシンガポール国立大学はクオンツ養成プログラムのレベルの高さで知られている。

しかし、最近は何でもかんでも「AI」と付けるので「それがどういうAIなのか」が大事だ。

当初は為替オプションで運用する。例えば豪ドルとニュージーランドドルのクロスレートには鉄鉱石や牛乳の価格変化と関係があることが、これまでのトレーダーとしての経験で分かっている。こうした経験などに基づいて当初約200のデータを使い、季節性や資産間の相関、経済統計モデルなどで分析。AIが為替の動きの方向と幅、確率、期間を予想する。

同社は米エヌビディアの創業支援プログラムでシンガポール第1号の認定を受けた。エヌビディアはAIの心臓部分である演算装置GPUで世界7割のシェアを持ち、今回の認定によりアンサンブルはGPUテクノロジーやハードウエアを安価で得られるほか、AI関連人材の採用がしやすくなったという。大柿氏は、通常ヘッジファンドはスタートレーダーを雇うことに投資するが、「資金が許す限りたくさんのデータサイエンティストを雇う」と話す。

記者の書き方があるため何とも言えないが、これはオーソドックスな「クオンツファンド」だと考えられる。広義のAIは活用しているだろうが、最近流行している領域のものは使っていないだろう。ディープラーニングの学習には創業支援をしたNVIDIAが製造するGPUが現状の最適解ではある。ただし、ディープラーニングは画像認識・生成、音声認識・生成で大きな貢献をしているが、金融市場の取引ではまだ実験段階と考えられる(もしかしたら密かに活躍している可能性はあるが)。GPUはビジュアルのレンダリングには向いているが、HFT(高頻度取引)には向いている、のだろうか…

もちろん「プレスリリース芸」ではあるだろうが。

ヘッジファンドの死

近年大型のヘッジファンド「マクロファンド」の運用成績の平均は、インデックス投資より劣っており「(パフォーマンスが悪いのに)高額な手数料を取るファンドマネジャーが必要か」という段階に来ている。「ヘッジファンドの死」と表現されることもある。投資の問題はあまりに複雑になりすぎて、伝統的な人間主体のメソッドは過去ほど有効でなくなってきているのかもしれない。

Bloomberg「世界首位のマクロヘッジファンド、運用成績プラス47%で圧勝」を参照する。

ヘッジファンド・リサーチによれば、マクロヘッジファンドの1-10月のリターンの平均はプラス2.4%と投資戦略の中では世界的に見て最低で、その中でプルレブのリターンは際立っている。世界有数のマクロヘッジファンド運用会社の一つであるブレバン・ハワード・アセット・マネジメントの今年のリターンはマイナスとなっている。

Via Bloomberg

数学、機械学習、CSの台頭

唯一残されたスウィートスポットが数学と機械学習、コンピュータサイエンスの専門家からなる「クオンツファンド」である。

FT ”Machine learning set to shake up equity hedge funds”を参照する。

データ・プロバイダーのHedge Fund Researchによると、ヘッジファンド業界においてコンピュータを使って機械的に運用される資産の規模は、2009年の4080億ドルから、2017年には9180億ドル程度まで急増した。顧客規模も8年連続で増加している。

Googleの親会社であるAlphabet会長のエリック・シュミット氏は5月、ヘッジファンドマネジャーの聴衆に対して「コンピュータがデータや市場シグナルを解読することなく取引が行われることはなくなる」と語った。

「機械学習を活用するために創設されたスタートアップたちに期待しています。私が描写したような(コンピュータによる)パターン認識が、従来型のクオンツが行う線形回帰アルゴリズムよりも優れているかどうか分かるだろう。テック業界にいる多くの人々は新しい形のトレーディングに慣れることができると考えている」。

Two Sigma

最も有名なのがTwo Sigma。コンピュータサイエンティストのDavid Siegeと数学者のJohn Overdeckが2001年に設立。超速の高頻度取引を得意とし他者をパフォーマンスで大きく引き離している。

同ファンドが注目されたのは14年末。Enhanced Compass Fundの同年の年率リターンが57.55%を記録した。Two Sigma Compass Caymanの運用成績は14年が25.56%、15年が15.02%、16年が10.4%と3年連続2ケタを記録。Two Sigma Absolute Return Compass Caymanの運用成績は、14年が10.09%、15年が14.99%(HSBCオルタナティブインベストメントグループの運用成績レビュー)。2017年11月の段階で運用額は500億ドルを超え、業界最大手で同様のクオンツファンドであるRenaissance Technologies(500億ドル)やDE Shaw(450億ドル)を抜いたと言われる。

同社は典型的なヘッジファンドと比較してとてもユニークなカルチャーで知られている。FT ’Two Sigma rapidly rises to top of quant hedge fund world”を参照しよう。

同社のクオンツは、典型的なヘッジファンドとは異なるバックグラウンドを持つ傾向がある。 Two Sigmaのスタッフ1200人の半数以上が金融業界以外から来ており、数学やコンピュータサイエンスの教育を受けている。そこには日本のバックギャモン・トーナメントの勝者や「世界初のオープンソース・ソフトウェア・アーティスト」が含まれている。

オフィスはこんな感じらしい。

結論

ヘッジファンドの多数派は平均より勝っていない。一握りの機械を扱うのが上手なファンドだけが平均を上回るパフォーマンスを上げ、運用額の集中を楽しんでいる。人間がとれる部分はまだ残っているといわれるが、Two Sigmaのようなプレイスタイルが市場の隅々まで浸透したとき、マーケットには一体に何が起きるのか?

参照

Eyecatch Photo Via Computer History

1 Comment

LSTM

かなり最先端のディープラーニングアルゴリズムを使っていると聞きました。主なものはCNN,FFNN、LTSMなどです。NDIVIAのディープラーニング公認インストラクターも働いているそうです。

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