ビジネスと個人のトレードオフ ビットコイン2xフォーク危機

分析

ビットコインは現在、潜在的な危機に直面しています。この「2xフォーク」と呼ばれる危機は、オープンソースソフトウェアとしての開発か、それともVISAのような新しそうで古い閉ざされた金融を目指すかの争いです。

ビットコインは11月16日頃に2xフォークを迎える見通しです。

予定されている2xフォークは、マイナー、ウォレット、取引所、パイメントを含む主要な業界関係者の間で行われた「ニューヨーク協定」の結果です。この協定はエコシステムの主要プレイヤーを含む22カ国にまたがる58社によって結ばれました。83.28%のハッシュパワーをもつマイナーが参加したと主張されました。現状このすべてが2xを支持し続けているわけではないのですが、マジョリティは依然としてブロックサイズを2倍にすることを支持しています(NYAの参画者一覧はこちら)。

1) デッドオアアライブの攻撃

2xは単なるフォークだけではなく、1xのチェーンの存続を許さない戦争を仕掛けています。なぜなら、2xを支持するニューヨーク合意(NYA)のグループはリプレイアタックのプロテクションを実装しない考えだからです。

リプレイアタックはbitFlyerの用語集でこう説明されています。

ハードフォークによってブロックチェーンが複数の枝に分岐し、異なる 2 つ以上の独立した台帳に分かれてしまった場合において、ひとつの枝で有効なトランザクションが他の枝でも有効となることを利用して、ある台帳上で有効な取引を他の台帳上でも実行することにより、送金者の意図しない台帳上で資産移動させてしまうことを、リプレイ攻撃といいます。

自動でリプレイアタックを防ぐ堅牢なプロテクションを付けると既存のウォレットとの互換性がなくなります。2xはBitcoinの正統なアップデートを狙っています。

2) オープン vs 閉鎖

2xは主にビットコインを「VISA」のような事業者のブランドに変えていきたいと考えています。より多くのトランザクションを格納するためにはブロックサイズを増やすことを求めています。彼らはビットコインは金融業界が持つパイを自分らのもとに引き寄せるためのツールと考えています。NYAに参画する企業たちは現状のビットコインエコシステムだったり、コア開発者が企図する未来図が余り心地よくない。

他方、1x派のコア開発者はレイヤー2の開発に集中しています。彼らにとってはビットコインはオープンソースソフトウェア(OSS)であり、ソフトウェアとしての合理性を追求していきます。

私が取材した上記のイベントでは、Blockstreamインフラストラクチャーテックエンジニアのラスティ・ラッセル氏は、ビットコインをOSSのLinuxと比較し、ブロックチェーンをLinuxのカーネルとみなし、オフチェーンのレイヤーへとケイパビリティを拡大していくことを説きました。Blockstreamがすすめる「サイドチェーン」プロジェクトです。VISAのようになることは考えられず、Linuxを基にしたAndroidのような世界中のモバイルの基盤へとビットコインは成長していくというビジョンでした。

このレイヤーの開発によりビットコイン関連企業群の一部が淘汰されうると考えられます。特に近年影響力を高めたマイナーの力を削ぐ試みが隠されています。ここにはコア開発者がもつ哲学も大きく関連しています。これは次章で説明します。

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3)個人の解放 vs ビジネス

ビットコインはサブプライムローン危機に端を発した世界金融危機の直後に謎の日本人とされる男性によりその生を受けました。Bankingを秘密鍵とともに個人のもとに戻します。コンピュータサイエンティストや暗号学者らが重視するのは主権(sovereignty)という概念です。主権は国家などに適用される言葉だと学校は教えていますが、それが個人のものであるという強い信念に打たれています。

現行のフィアットカレンシー(法定通貨)制度と金融機能、規制の仕組みは、国と金融機関にやさしく市民にやさしくない。近年の日本人は特に金融の恩恵を受けない「国民」と呼べるでしょう。もしかしたらこれが暗号通貨の取引額の大半を日本人が占める理由かもしれません。

伊藤穰一は先日の「Scaling Bitcoin Stanford」の場で、ICOを巡ってこう指摘しています。伊藤は元々の出自に加えて、Blockstreamへの投資のほか、MITデジタルカレンシーイニシアチブでコア開発者と密接な関係を持っています。

伊藤氏はスピーチの後半でICOの問題についてとりあげ、そもそもビットコインをはじめとする仮想通貨のコンセプトは既得権益を持つ金融機関が一般の人々からお金を搾取できないようにするはずだったはずなのに、ICOは何も理解していない人からお金を取るシステムになりつつあると指摘した。伊藤氏は「仮に悪いことができない設計であったとしてもICOに関わりたくない理由は、本来投資してもらうべきでない人々の興味も引いてしまうからだ」と話す。(CoinChoice)

有名ビットコイナーのWhale Pandaはこう指摘しています。

Bitcoinを実質上保有しているのはコア開発者であり、ほとんどがこの素晴らしいオープンソースプロジェクトに対して無給で働いています。つまり、彼らには短期的な金銭的インセンティブが働かず、長期的にBitcoinにとって最善のことをしていると私は考えます。

これに対して金融機関出身者を含むNYA派は、既存金融機関のポジションを奪い、新しい市民からお金を搾取する仕組みをビットコインで作ろうとしています。ビットコイン開発がコア開発者の望む方向に進めば進むほど、企業が介在する可能性が減り、市民がBankingをめぐるあらゆることを自分たちだけで実現できることに近づきます。両者の決裂は約束されていると言われてもいいでしょう。

結論

ユーザーのために生まれたビットコインが、ユーザーのための長期利益を生むためには、2xフォークは許容できません。レイヤー2こそがビットコインの未来です。

Whale Pandaはこう問題提起しています。

金融の独立と自由をあきらめ、VCやCEOの手に渡したいのですか?

 

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