1円課金の新しいビットコイン経済の兆候:今週のAxionサマリ

さて今週のAxionサマリの初回です。今後一週間で得られたニュース、データから得られる洞察、予測を毎週金曜日にパブリッシュします。

内容は「人々が求めているのは、ニュースではなく、ニュースやデータから作られた分析、予測、あるいは提案ではないか」というビジョンに則したものになります。

中身は過分にマニアックかもしれませんし、分からない単語が説明無しに出てくるかもしれません(読み飛ばしてください)が、毎週付き合っていただければ、あなたは最先端テックがビジネスを再創造することにリアリティを感じ、どんどん深い場所にいけると確信しています。

長期的にはあなたは仕事や人生の大きな差を享受できるでしょう。世界はどんどん知識集約型になっており、賢い知性はよりよい人生を提供してくれます。デジタル経済の世界へようこそ。どうぞお付き合いください。


サマリ

何と言ってもビットコインの「Lightning Swapのテスト成功」が興味深い内容です。これはインターネットエコノミーの革命につながりうる技術革新の兆候です。ICOはほぼ死にました。少なくともICOという言葉とそのブランドは死にました。製造業では模倣学習という新しいメソッドの実行が企図されています。中国のスマニューは世界企業への階段を登っており、テックジャイアントが蓄積する富はやがてウォール街を小人のようにみなし始めるでしょう。

1. Lightning Swapのテスト成功

テスト成功が意味することは、ビットコインの少額決済が現実的になりつつあるということです。トランザクションがデジタル完結するタイプのビジネスが、Bitcoinのオフチェーンペイメントに委ねられる可能性はあります。1記事あたり50円のような課金が可能になるので、既存のコンテンツ流通がいきなり崩壊するシナリオもありえます。世界の支配者(?)になりつつあるFAANGsの半分はビジネスモデルを刷新する必要が出てきます。技術に詳しくない人特有の楽天的な考えかもしれませんが、マイクロペイメントは資本主義のあり方を変えるイノベーションなのです。

アンドロイドに対するLinuxのように、ビットコインをソフトウェア基盤として捉え、その外側にレイヤーが重なり、同時にアンドロイドフォンのようなハードウェアが生まれる可能性もゼロではありません。新興国、発展途上国ではたぶん簡易で単機能型のハードウェアから、暗号通貨活用が広がるシナリオは有り得そうです。開発国の人々はレガシー金融のバイアスがない分、トラストレスな取引の世界にすっと入っていくのではないかと予想しています。

2. 2.32億ドルICOのTezosに集団訴訟

Tezos(テゾス)の創業者、キャスリーン・ブライトマン、アーサー・ブライトマン夫妻を相手取ってフロリダの投資家、デビッド・シルバーがフロリダ連邦地方裁判所に集団訴訟を申請[広瀬隆雄 Market Hack]

ICOは曲がり角を迎えたと考えられます。以下が主要な欠点あるいは課題です。

  • 投資家保護の著しい欠如
  • 分散型オープンソースソフトウェアの開発資金調達手法という当初の意義からの著しい逸脱
  • 値付けにおける著しいバブル

日本のICOはとてもユニークであり、海外のICO案件とは区別されて議論されるべきです。調達額は売上とみなされ課税され、調達額の一部をコンサルティングフィーとして払うケースも散見されます。起業家はExitのないゲームを開始する羽目になります。起業家にとってメリットが極めて薄く、「ICOコンサル」にとってだけがうまいゲームと考えられます。

Ethereumを活用してトークンを発行できるという仕組みは素晴らしく、株式に相当するものだけではなく、シェアリングエコノミーやC2Cの仕組みを加速させる要素として素晴らしいユースケースが想定されています[参考記事]

3. 製造業におけるAI+ロボットの進展

この記事で紹介した通り、製造業の現場でのAI+ロボットの開発が進んでいます。Elon Muskが支援するOpenAIの一部のAI研究者が、自分たちのスタートアップ「Embodied Intelligence」創業。

次の10年から20年の間に、製造と組立工程の作業は汎用ロボットによって行われるようになる可能性が高いです。これまで活用されてきた強化学習に加えて、人間の指示や行動をから機械が学習する模倣学習(Imitation learning)が期待されています。

この分野ではカリフォルニア大学バークレー校の教授でOpenAIのリサーチサイエンティストであるPieter Abbeelの研究が大きな前進を生み出しました。ファナックと組んで日本の製造業の現場で同様の変化を起こそうとしている、Preffered NetworksもこのPieter Abbeelをアドバイザーに採用しています。

少子高齢化に苦しみ製造業に依存する日本にとって、投資が不可欠な領域であることは間違いありません。未来は「人から学習するロボットから学習するロボットから学習するロボットから学習するロボット」に託されています。

4. TOUTIAO運営がMUSICAL.LYを買収

中国と米国のスタートアップ・VC資本の融合がより加速することになりそうです。

中国の日間アクティブユーザー1.2億人のニュースアップ「Toutiao(今日頭条)」を運営するByteDance(字節跳動)は「Musical.ly」を買収したと発表。買収額は8億ドルから10億ドルと関係者は語っています。ByteDanceが展開する「TikTok」はもともとMusical.lyの中国版クローンとして開始したが「中国のクローン側が米国のオリジナルを買収した」ことになりました。この領域の傾向としては下記の状況が見て取れます。

  • Instagram、Periscope、Vineなど近年の米国の画像、動画関連モバイルアプリ運営企業は概ね、先行するソーシャルアプリ企業にM&Aされる傾向が強い。先行者が広告事業で先行しており、技術基盤などを保有しているのでシナジーがあると同時に、両者にとって競争することにメリットが薄い
  • SnapがIPO以降不調であり、市場が同様のアプリに対して厳しい見方をし始めている。Musical.lyもIPOを探るよりはM&Aでのイグジットを目指すのが現実的と判断したと考えられる。

5. 膨張するテックジャイアント資本

The Economistによると、Appleの金融セクターはゴールドマン・サックスの約半分の規模に達しています。その結果いわゆる「Apple Capital」と呼ばれる事業領域では、資産は2620億ドル、負債は1080億ドルで、2011年以来1.6兆ドルの証券を取引。

Appleには極めて割高なスマホやラップトップPCを消費者に販売する類まれな能力がある一方、我々の将来に対して面白いビジョンがありません。だからこそ、IoTのエッジーなビジョンをもつ孫正義がタクトをとるVisionファンドにもAppleは資本を入れています。

今後もこういう巨大資本がテックセクターにお金を投じ、新しい産業が芽生えるというサイクルが拡大していくでしょう。Appleの時価総額は900億ドルを超えました。Google、Microsoft、Facebookなどもキャッシュを積み上げており、すでに驚異的なレベルの彼らのキャッシュフローは今後、より進化していきそうです。

テックジャイアントの金融資本として側面がより目立ってくるでしょうが、私は課税主義者に賛同しません。概ね政府は正しくお金を使うことができないからです。それよりも社会の生産性を爆発的に向上させるほうが解決策になるでしょう。


いい週末を!

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