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Vitalik Buttelin がDAICOのアイデアを投稿したのが、大きな反響を読んでいます。Vitalik Buterinはこのコンセプトを「DAO(Decentralizes Autonomous Organization: 自律分散型組織)のメリットのいくつかを統合してICOモデルを改善し、複雑さとリスクを最小限に抑えるようにするアイデア」と指摘しています。

Vitalikは、ひとつのプロジェクトに集中することと51%攻撃リスクを排除できるICOの利点と、時間をかけて資金を分散し、Crowd Wisdom(群衆の叡智)と中央集権型のチームを不信任するDAOの能力を組み合わせたダイアグラムを示しています。

改善点は以下のことをトークンホルダーが投票で決定できることだ。

1. プロジェクトチームが調達資金を引き出せるペース(tap)をコントラクトで制約
2. (プロジェクト進捗にトークンホルダーが不満を持たざるをえない状況が生まれた際は)自己消滅させてETH全額をトークンホルダーで引き出す

これにより、プロジェクトチームが開発を進めるインセンティブをトークンホルダーが焚き付ける格好になります。物言う株主と株式会社の関係に似ています。これまでのICOプロジェクトには詐欺スキームのものやチームが資金を得た後、換金して旅行に行ったりするなどのケースが認められています。ICOはあっという間に「暗号通貨界隈で最も関わってはいけないもの」になってしまいました。

投票を行うということなので、多数派工作が行われて、プロジェクトを頓挫させるプレイヤー(総会屋的な奴)が現れる可能性が出てきています。Vitalikはゲーム理論的な工夫で51%攻撃(つまり総会屋の工作)を防げると言っていますが、はたしてどうだろうか…?

トークンホルダーとチームの関係は、プリンシパルー=エージェント関係になるのだろうか? しかしそうなるやいなや、エージェントの立場を嫌う人々で構成されたチームは崩壊するかもしれません。

プリンシパル=エージェント関係(-かんけい、principal-agent relationship)とは、行為主体Aが、自らの利益のための労務の実施を、他の行為主体Bに委任すること。このとき、行為主体Aをプリンシパル(principal、依頼人、本人)、行為主体Bをエージェント(agent、代理人)と呼ぶ。

開発者の自由な発想や開発とトークンホルダーのインタレストはトレードオフに近い状態だと考えられます。VitalikはあくまでICOを、Ethereumプラットフォーム上で行われるオープンソースソフトウェア(OSS)プロジェクトの資金調達方法ととらえているはずです。株主と企業の関係とは異なる制約の課し方を検討した結果、こうなったのでしょう。

暗号通貨にはこのように経済学関連の分野が存在します。特に、マーケットデザイン、ゲーム理論、行動経済学などを活用できそうです。また今回触れましたが、プリンシパル=エージェント関係のようにポリティカルサイエンスを活かすことができます。

日本への影響

日本のICOは政府の規制・税制とプレイヤーの思惑が混ざりあい、とても独特の形態に落ち着きました。これはチームや投資家にとって余りにも不利なのです。以下の記事で深く検討を行いました。

瀕死のICO – 終わりの始まりか、それとも蘇生か

これにDAICOに対する新しい解釈が加わるとどうなるのか見ものです。「翻訳」の段階で色んな人の思惑が載せられることになるので、開発者や投資家は自分の利益が既存されていないかを注意深く見守るべきでしょう。

Photo by John Phillips(CC)

投稿者: Takushi Yoshida

起業家&デジタルビジネスアナリスト。早稲田大学政治経済学部政治学科卒。ジャカルタで政治経済記者。APEC、ASEAN首脳会議でTPP、ASEAN+3などの地域経済統合をリサーチ。帰国後、米デジタルマーケティングメディアDIGIDAY[日本版]立上げ参画。2017年10月テックビジネス戦略メディアAxionを創業。

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