Amazon Echoはコネクティッドコマースの「トロイの木馬」

Amazon、Google、Microsoft、Apple、FacebookがAIプラットフォームの位置を巡って競争している。Amazon Echo/ Alexaの成功が、今春の開発者会議でのスマートスピーカー競争の引き金を引いた。人が常にAIコンピューティングに触れる時代を迎えるとき、その接点を確保することは極めて重要になるだろう。Amazonは「家」という人間の行動領域の重要な一角を占拠している。そしてそこはほんの始まりに過ぎない。

予測

  • Amazonの「Amazon Echo」という「トロイの木馬」による「家」の占拠が成功している。スマートホーム、家電、自動車との協業も拡大している。eコマースというバリューチェーンと直結していることや、Prime会員を囲い込むビジネスモデルも、Amazonのパーソナルアシスタント/音声プラットフォームとしての成功を大きく支持することになる。Amazonはあらゆる商取引をオンライン上や接続された環境で行う「コネクティッドコマース」を目論んでいるようだ。

論拠

パーソナルアシスタント/音声プラットフォームの「トロイの木馬」であるAmazon Echoは他を大きく突き放している。

  • Amazon Echoが市場の7割を確保。マーケティングリサーチ企業eMarketerは、2017年内に3760万人(前年比128.9%増)がスマートスピーカーを利用すると予測した。Amazon Echoは70.6%のユーザーを確保し、Google Homeは23.8%という構図。eMarketerは2018年はAmazon Echoがわずかにシェアを落とし、Google Homeがシェアを伸ばすが、Amazonが支配的なプレイヤーにとどまると予測している。Amazon Alexa、Google Assistant、AppleのSiri、マイクロソフトのCortanaなど広義のバーチャルアシスタントカテゴリーも23.1%伸びる。
  • スマートスピーカーの主要購買層はミレニアル世代。eMarketerによると、2017年の段階でミレニアル世代のユーザー数は2990万人でジェネレーションZの約2倍。2019年には39.3%に達する。

先行するAmazon Alexa

AmazonがAmazon Echoを市場に投入したのは2014年後半。Googleなどの競合が参入するまで2年程度先行していた。モルガン・スタンレーは2017年1月時点でAmazon Echoの販売台数は1100万台を超えていると予測していた。

7月初旬に開催された「Amazon プライムデー 2017」でも、スマートスピーカー「Amazon Echo」が最も売れた商品だった。平常時からベストセラーを記録していたEchoシリーズだが、Amazonはプライムデー特価として179.99ドル(約2万円)の「Amazon Echo」を89.99ドル(約1万円)と半額で販売したのが、功を奏したという。

Amazonは自らAmazon Echoの販路を持っている部分がアドバンテージだ。市場を先に占拠すればEchoが「トロイの木馬」となり、音声データやユースケースに関するインサイトを確保している。ユーザーの51%がAmazon Echoをキッチンに置いており、ユーザーの48%が複数台を使用しているという調査(2016年9月:experian)もある。Amazonは6月に米国で画面付きのEcho Showをリリース。本来のコンセプトから外れる画面付きだが、Amazon Echoのユーザー数が拡大しデータからユーザーのニーズを推測できた可能性がある。

Via Amazon.com

Amazonはスマートホームやテレビ、自動車など各種産業とパートナーシップを拡大している。今年1月のCESでは、Amazon Alexaを搭載した自動車、スマートホームデバイス、家電が発表されており、これが今後もスキル数や収穫できるデータ量に寄与すると考えられる。Voicebot.aiによると、Amazon Alexaのスキル数は15000を超えたのに対し、Google Assistantのスキル数は378に留まったという。英国やドイツ固有で、米国のものに互換していないスキルを加えると、Alexaのスキル数は2万程度と推測されている。

Amazon Alexaがもたらす収益はどれくらいになるだろうか。CNBCが引用したRBC Capital Marketsの予測を引用する。

  • RBC Capital MarketsはAmazon Alexaが2020年までに100億ドルの収益をAmazonにもたらすと予測している。Alexa搭載デバイスの販売、音声によるショッピング、プラットフォーム収益が100億ドルの主な内訳だ。2020年までに全世界で5億のアクティブカスタマーを確保。米国内の利用率は40%、海外は25%に達する。これは2020年に6000万台のAlexa搭載デバイスが販売されることを意味する。2年間の買い替えサイクルと85ドルの平均販売価格を想定すると、2020年には50億ドルの収益を生むと概算できる。
  • Alexaデバイスによる音声ショッピングは2020年までに収益50億ドルを生む。Amazon顧客228人に対する調査で、17%がeコマースの注文に応じたと回答した。RBCは今後この割合が拡大していくと推定。RBCはAmazonのアクティブユーザー1人あたり収益は2017年末に年間約350ドルとなり、5%ずつ成長すると仮定すると、2020年に年間400ドルに達すると予測。このうちAlexaデバイスを通じての収益が占める割合が5〜15%、あるいは40ドルに達する。Alexaデバイスを通じたショッピングは1億2800万(推計)が2020年までに50億ドルの収益をもたらしうる。
  • Alexaデバイスが1億台を超えた場合、Amazonは「プラットフォーム収益」を享受する。AlexaはUberやSpotifyを音声で操るというスキルを持つ。スキルが拡大するにつれて、掲出頻度を上げるために料金を徴収できる、アップストアのようなマーケットプレイスを構築する可能性がある。パートナーがスキル活用のごとにAmazonに対してフィーを払うビジネスモデルも考えられる。
  • AWSの利用促進。デベロッパーはアプリ製作やデータ管理、分析のためにAWSを活用する

メッセージングアプリにも伸びる触手

Amazonは7月中旬にメッセンジングアプリを開発していると報道されている。メッセージングアプリはGoogle Play StoreとApple App Storeでリリースされる予定とされ「Anytime」という名前のようだ。Google AssistantやApple Siriが主戦場としするモバイルにも触手を伸ばしている。Amazonは「家」だけでなくモバイルというタッチポイントも取りたいと考えているようだ。

結論

仮にAmazonがRBCが予測するような収益を作れなくとも、Amazon自体にはそれほど痛手ではない。家というユーザーが多くの時間を過ごす場所で、あらゆる機器を動かす手段にAlexaデバイスが入り込む利点は大きい。ひとつは収穫できる音声データやユースケースに関する洞察などで競合に差をつけられることだ。加えて、AmazonにはECというバリューチェーンがあり、会員の物品購買やサービス利用からではなく、年間会員料を利益減とするPrime会員のビジネスモデルもあり、必ずしもAlexaの活用を収益化する必要がない。この点が競合に対して有利に働く可能性がある。

Written by Takushi Yoshida / 吉田 拓史

Photo via Amazon Echo twitter account

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