Alibabaの防壁は高い 難しくなるAmazonの東南アジア参入

予測

  • Amazonは東南アジア市場参入が前々から取り沙汰されてきたが、アリババが着々と投資やその他のプレーヤーとのパートナーシップを築いています。AmazonはWhole Foods Market買収に137億ドルを費やしたいま、参入はどんどん難しくなっています。

東南アジアのeコマース市場は大きな成長期を向けえようとしています。GoogleとTemasekの「e-conomy SEA by Google and Temasek」は東南アジアのeコマース市場は2015年の55億ドルから2025年に880億ドル規模に達すると予測します。成長は新品のeコマースでのものです。中古品のコマースは成立要件が満たされるまでにまだまだ時間がかかりそうです。

このeコマースの成長は経済のボリュームゾーンであるインドネシア、ベトナム、タイ、フィリピンにより牽引されます。シンガポールは2013年で東南アジア最大の市場だったが、人口500万人、一人あたりGDP52800ドルの島国の地位は相対的には低下します。

地域には中間層とインターネット接続(コネクティビティ)の拡大という、eコマース市場を成長させる決定的な要因があります。シンガポールを除く各国には日本と同様のレベルの物流が全国に整備されていません。eコマースが進出すべき市場がより大きいということを意味します。

再びGoogle・Temasekレポートで示された洞察を引いてみましょう。良いレポートがあるときはそれに頼り、新しい洞察を自分で生み出すことが寛容ですね。

  • 東南アジアは世界で最速のインターネット利用拡大地域(5年間の年平均成長率14%)。ネット利用者は2億6000万人が4億8000万人に増加。月平均380万人増加する。
  • 東南アジアのリユースを除くeコマース市場は2025年までに880億ドル(約9兆円)に達すると予測される。10年間で年平均成長率7%。1200億ドル(約12兆円)に達するオフライン小売業に対し、成長速度が著しい。
  • 東南アジア特有3つのファクターがeコマース市場成長の要因。①急成長する若年層人口、7割が40歳以下。②大型小売店が少ない。1人あたりの店舗数は米国の3分の1。フィリピンやインドネシアの遠隔地の島々は小売店へのアクセスが難しい。③中間層の急拡大。
  • すべての東南アジア諸国のeコマース市場が50億ドル(約5000億ドル)超の規模に達する。

ロケットインターネットの退場

東南アジアのeコマース市場の開拓に重要な役割を果たしたのは新興国でVCと会社設立を兼ねるビジネスを進めてきた独ロケットインターネットでした。ロケットが東南アジアで設立したさまざまなコマースエンティティは、上図にあるような市場の拡大を捉える前に資本を使い尽くしてしまいそうです。

ロケットは昨年エンティティの株式の減価をせまられました。アリババグループはロケットの最も重要なシンガポールのeコマース企業Lazadaの株式の大半をアリババの株を10億ドルで買収しました。アリババは2017年6月にLazadaに10億ドル(約1120億円)を追加投資。総投資額は20億ドルに達し、保有株比率を83%に引き上げました。

ロケットの存在感が薄くなる一方、アリババの東南アジアにおける存在感が増しました。Alipayを運営するAnt Financialはアリババと中国国営資本でできた事実上の世界最大フィンテック企業。最近は国際送金ネットワークMoneyGramに8億8000万ドル、韓国のKakaoPayに2億ドル、タイの現地財閥系決済企業Ascend Money(金額非公開)を投資しました。アリババは東南アジアの決済とeコマースの双方に照準を定めているのでしょう。

Amazonの影と先行者利益

昨年頃からAmazonがシンガポールベースで東南アジアに進出すると噂されていました。ラザダは5月、Netflix、Uberと提携し月額28シンガポールドル(約2200円)で3者などのサービスを使えるパッケージ「LIVE UP」を提供開始しました。淘宝網の越境EC、生鮮食品デリバリーredmartも利用できます。これはAmazon Prime会員を模したサービスであり、LIVE UP加入者はディスカウントを享受できます。これはAmazonの参入余地を奪おうとする戦略の一つです。

市場成長の予測はあるものの、アリババは商取引のわずか3%がオンライン上で行われていると推定しています(Tech Chrunch)。市場がまだ離陸していない点が、ロケットに苦境をもたらしましたし、楽天もeコマースに関するほとんどのブランチを東南アジアから引き払うことになりました。

富裕国との違いはコールドチェーンが未整備のため、生鮮食品市場が未整備で、シンガポールを除く国では流通において零細商店主らによる取引が主流です。このため生鮮食品のeコマースにより参入余地が見て取れます。大型店舗がまだ揃いきっていないことも追い風で、大型店舗に乗用車などで買い物に行く習慣が拡大する前に、eコマースにリープフロッグすることが重要だ。

Amazonはシンガポールやマレーシアに現地法人を持っており、これらの法人はインドの法人への資金移転などでも活躍しています。インドネシアでも現地法人設立のために関係者への会合を行っていると噂になっています(筆者はインドネシアに5年住んでおり現地に友人がいます)。Amazonは様々な事業領域で強烈な競争を行っていますし、Whole Foods Marketを137億ドルで買収すると合意し、キャッシュを減らしています。東南アジアでアリババと決戦を行うのか興味深いです。

参照

Written by  吉田拓史 / Takushi Yoshida