AIは仮想現実のなかで超高度化されたシミュレーションを行う

映画『マトリックス』に登場するような仮想現実(VR)の世界を現在作り出すのはまだかなり難しく、超巨大なコンピューティングパワーが必要です。と同時に現在よりもより複雑な知性体が、VRのなかで学習し行動することも重要です。自律的に動き回るAIこそ、現実に限りなく近い仮想現実の実現に必要なのです。このようなことは一部のMMORPG(Massively Multiplayer Online Role-Playing Game:大規模多人数同時参加型オンラインRPG)などのカテゴリーのゲーミングではすでに試されています。

DeepMindは2015年にAtariの「ブロック崩し」を自律的に学習するdeep Q-network (DQN)の開発に成功しました。同社が得意とする深層教科学習は人工知能研究における大きなブレイクスルーでした。Elon Muskなどが関与する非営利団体「OpenAI」はAIトレーニング用のゲームを公開しています。AIのトレーニングにはさまざまな条件がきっちり設定されており、現実世界のような不確実性が暴れ回らないゲームという仮想現実が向いているようです。

MITテックレビューによると、アルファベット(グーグル)の子会社ディープマインド(DeepMind)とカーネギーメロン大学の研究チームは、ファーストパーソン・シューティングゲーム(本人視点のシューティングゲーム)をベースにした3D空間で、機械が自分自身で言語の簡単な原理を理解する方法を開発しました。

「3D空間で言語を理解できるようにすることは、間違いなく、現実世界で同じことをするための重要な一歩です」とカーネギーメロン大学の修士学生、デヴェンドラ・チャプロットは話す。チャプロットは計算機用言語協会(ACL)の年次総会で論文を発表する予定だ。究極の目標は、現実生活に非常に近いシミュレーションを作り、その中でAIが訓練したことを現実世界に持ち込めるようにすることだという。

(中略)最も重要なのは、どちらのプログラムも、初めて遭遇した状況に対してそれまでに学習したことを「一般化する」ことに成功したことだ。訓練シナリオに柱と赤い物体が含まれていれば、たとえ訓練でその物体を見たことがなくても「赤い柱に進め」という命令を実行できた。

メディアの上では、読者の理解を促すためにAIや仮想現実は異なるカテゴリーとして紹介されています。しかし実際にはこの二つを完全に別々なまま語ることが難しいケースがあります。AIは巨大なデータセットで現在ある問題を解決させてくれます。マーケット、都市、社会を作り変える事ができる可能性を提示しています。行動データたちの巨大なプールを超巨大な仮想空間でシミュレーションすることができます。

長期的視野を持てば高度なVRのインフラストラクチャーの構築は現実世界を改善する大きな機会があるということを意味しています。仮想現実世界におけるシミュレーションはAIが活躍する世界を拡大することになります。

VR基盤提供のImprobableは今春、ソフトバンクが5億200万ドルの投資を発表しました。同社の投資家にはAndreessen Horowitz、香港のHorizons Ventures、シンガポールのTemasek Holdingsなどがいます。Improbableは2017年初頭に「SpatialOS」の開発者向けのベータ版のリリースと合わせて、Googleとパートナーシップを結びました。高次のVRの構築には膨大なコンピューティングパワーが必要です。

「”Beyond Big Data” CityLabs 2015 – our stage presentation」においてImprobable CEOのHerman Narulaが提示したプレゼンを参照しましょう。

都市開発上行われているシミュレーションはとてもスケールが小さくシンプルです。仮に都市を仮想現実上に完全にシミュレーションできれば、人口移動、経済活動、テレコミュニケーションネットワーク、公共交通機関に関するシミュレーションを同時に行えます。新しい経済モデル、交通モデルを提示し、大量に発生する結果に対して都市システムは素早く対応できるようになります。シェアリングエコンミー、ドローン、自動的に建設されるインフラなど都市には今後も数百のイノベーションが予期されており、より複雑なシミュレーションを行えるようになる必要があります。

都市の中にはさまざまなセンサー張りめぐらされています。あなたが意識もしないさまざまなデバイス、それこそスクリーンにさえもカメラが装着されています。赤外線などのアクティヴなセンサーが人の出入りを監視しますし、音声認識技術の進歩は、都市で交わされる人々の会話の解析の可能性を示唆しています。都市の中を動き回る人々がもっているモバイル。このモバイル自体がセンサーとして働いており、通信ねとワークへの接続、ワイファイなどへの接続により、位置情報や消費している情報の匿名化された形での収集を可能にします。都市はそれ自体がインテリジェント(知性体)としての性質を帯びるようになるでしょう。

都市以外の膨大な可能性

超高度で巨大な仮想現実の生成に成功すれば、例えば人間の生体をシミュレーションして投薬実験をしてみるなど、都市以外のさまざまな領域でもシミュレーションを実施して、あらゆる分野でトライアンドエラーの周期を短くし、より最適な解を見つけることができるはずです。

下の画像はNVIDIAのGPU Technology Confferenceで紹介されたVR空間での乗用車の試乗です。座席に座った視界を確認できるだけではなく、乗用車のなかの部品を一つ一つ細やかに確認できます。

Via NVIDIA / Youtube

これは現実の現物では不可能なことであり、消費者はより理解を深めた上で乗用車を購入できるようになる例です。超高度なVRを生み出すにはNVIDIAが提供するような、GPUコンピューティングの力が必要であり、こういうGPUのパワーをクラウドで獲得できるようになっていることも、VRの研究開発の後押しになっているはずです。GPUはAI特化型チップも提供しており、VRとAIというトレンドには近接部分があり、AIの学習をゲームで行うのと同様により高度な仮想空間での学習がメインストリームになる時期が近づいています。

参照

Written by 吉田拓史 / Takushi Yoshida

 

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