ビットコイン”価格”の歴史

筆者注:本稿は2018年2月2日に執筆しました。


2008年に「ナカモトサトシ」と名乗る人が暗号学者のメーリングリストに論文を発表しました。「ビットコイン:ピアツーピアの電子キャッシュシステム(Bitcoin: A Peer-to-Peer Electronic Cash System)」。そうそれはビットコインと呼ばれました。

現在1400億ドル(2018年2月2日現在)と評価される、ドル建ての時価総額に達するとは誰も想像できませんでした。コカ・コーラ、マクドナルド、フォード、キャタピラー、ナイキ、任天堂、ゴールドマン・サックスを合わせたものを上回る規模です。世界の銀行業界全体を揺るがす可能性を秘めていると考える人もいます。

BTCの発明、レートは0.0007ドル

彼はコンピュータ上でハッシュアルゴリズムを実行しその結果をチェーン上のデータ構造のストレージに保存しました。そのストレージを「ブロックチェーン」と呼びます。ブロックチェーンは非常に画期的な技術です。サトシがジェネシスブロックを公開した後、暗号学に熱狂する人々はそのテクノロジに注目しました。

一部の人はデジタルマネーを動かすことに力を貸すという良心からマイニングを行います。しかし、彼らの多くは報酬によってインセンティバイズされて採掘を行います。トランザクションを格納したブロックにおいてこのハッシュアルゴリズムを実行し、その結果を公開された台帳に保存すると、Bitcoinで報酬を受けとることができます。ピーク時にはこの報酬は25万ドル相当を超えていました。

最初の「マイナー」がそれに注目したとき、ビットコインには価値がありませんでした。しかし2009年10月に「New Liberty Standard」がビットコインの為替レートを設定しました。この値は1米ドル当たり1309.03BTCという穏やかな価格で、つまり約0.0007ドルだったのです。 New Liberty Standardは、通貨を「生成」するためにコンピュータによって使用される電気のコストから価格を導き出しました。

ピザを”1万BTC”で購入

さらに10カ月後Bitcoinの最初の販売が行われます。以前は何十人ものユーザーがBitcoinを購入していましたが、2010年5月22日にフォーラムサイト「BitcoinTalk」を使用して、Laszloという名前のユーザーが他のユーザーからピザを10,000 BTCで購入しました。このエピソードはとても有名です。

数ヶ月後の2010年7月にウェブサイトの「Slashdot」がその話を取り上げると注目を浴び、 Bitcoinの価値はその後の5日間で0.008ドルから0.08ドルに上昇しました。10倍です!

この一週間後、カードゲーム「マジック・ザ・ギャザリング」のカードのトレード業者だったMt.Goxがビットコイン取引所の操業を開始しました。Mark KarpelesがMtGox事業を開始したときにはビットコインの価格は1ドルに達しました。7カ月前の価格から125倍の増加を示していたのです。Mark Karpelesは文字通り価格の上昇が続くことにすべて賭けていました。

ディープウェブのマーケットプレイス

数週間のうちに他の3つのBitcoin取引所が開かれBitcoinを法定通貨で購入することができるようになりました。 BritcoinはBTCをポンドで、Bitcoin BrazilはUSDとBRLBitMarket.euはユーロという具合です。この後2カ月が経過するとビットコインの価格はさらに10倍になりました。Gawkerはディープウェブのマーケットプレイスで禁止薬物なども取り扱っていた「Silk Road」がBTCのみを通貨として受け付けていることを、スキャンダラスに書きたてました。これで再び価格が高騰しました。

Silk Road

2011年6月19日Mt.Goxはハッキングされました。攻撃者はデータベースにアクセスし、すべてのユーザー名とパスワードを使い、Bitcoinの価格が$0.01に下がるまで、ランダムなアカウントからBitcoinを売り浴びせたのです。攻撃者は賢くなく、Mt.Goxは一度取引所を閉鎖し、取引を元の状態に戻す(ロールバック)ことで修復しました。しかし、攻撃者は今度は同じユーザー名とパスワードを使用して600人のユーザーのアカウントをハックします。彼は約50,000ドルを得ることに成功しました。

最初のハックの数週間後、Coinbase / GDAXが米国で事業を開始します。 Bitstampもその後すぐにルクセンブルグで開業します。そして、2011年10月7日、世界の2番目の暗号通貨がリリースされました。Litecoinです。

翌年には取引所Linodeがハッキングされ、150万ドル相当のBitcoinが盗難されます。 Bitcoinは最初のフォークを経験しています。マイニング報酬が半減される最初の「半分の日」を迎えました。報酬が落ちると、投資家はマイナーが撤退することを恐れ、ひとつのマイナーが51%のハッシュパワーを保有することを恐れるようになりました。

51%のハッシュパワーをもつマイナーはBitcoinを支配することができます。Bitcoinの仕組みでは「ひとたびそれが動き出すと誰もそれを支配できない」という点が重要なのですが、それが脅かされてしまいます。

キプロス危機でロシア富裕層が活用

2013年3月25日、Bitcoinは最初の「バブル」を経験します。欧州中央銀行(ECB)と国際通貨基金(IMF)はキプロスに対し10億ユーロ規模のベイルアウトを実施しました。両者はキプロスの預金者にも負担を求めるという異例の「預金課税」を行いました。

キプロスは当時、特にロシア人富裕層の租税回避地だったので、急いで国からお金を取り出そうとパニックが起きました。キプロス内にあった何十億のユーロは「キプロス国内でBitcoinを購入し、それを別の国の口座を通して売る」ことによって、キプロスから脱出しました。10日間でBitcoinの価値は倍増します。 20日目にはそれはほぼ3倍になり、増加した取引量はMt.Goxのトレーディングシステムをダウンさせました。 Mt.Goxは当時すでに世界最大の取引所になっていたのです。

存在しないコインが価格を競り上げる

Mt.Goxは証券取引所ではないため、規制されていませんでした。だから、すべてのBitcoinの価値が2億5000万ドルを超えたとき、ウォールストリートで禁じられた価格操縦技法「Painting The Tape」がMt.Goxで行われたと言われています。ここでは詳しく触れませんが、Mt.Goxのような歴史の浅いマーケットでは「直近の取引価格」によりビットコインの価値が確定することを逆手にとり、ASKされている価格より高い値段で入札していくことでコインの価値を押し上げるスキームです。

2013年9月27日までMt. Gox内の誰かが「Painting The Tape」をしていたと考えられています。Mt.Goxは自らそれをやっていて、取引所を所有していたので「実際にお金を追加することなくBitcoinを買う」ことができました。そして自分のバランスを拡大させたと考えていいでしょう。

次の5カ月間、5~10分ごとに1つのアカウントは10~20のBitcoinをMt. Goxで購入し続けました。2カ月後の2013年11月29日までにBitcoinの価格は128ドルから1132ドルに上昇しました……。

中国人の大移動

2013年当時、「中国の経済成長が頭打ちになっているのではないか」(共産党政権が数字をナメているせいで数値上に現れないが)、「日本の90年代初頭のバブル崩壊(日本病。そしてその後の失われた30年…)と同じ状況に直面しているのではないか」という観測が浮上しました。中国の富裕層は大規模な資金流出を開始しました。ピーク時には年間1兆ドルが流出していたとも言われます。これは過剰なまでの中国の経済格差がバックグラウンドになっています。彼らは世界中の不動産を買いあさりました。

中国人はロシア人がキプロスで何をしたのかを知っていました。彼らは家の代わりにBitcoinを購入し始めました。需要を察知し中国国内で取引所が開設されました。2013年12月5日、中国政府は「金融機関がBitcoinを使用すること」を禁止しました。

先程指摘したスキームがMt.Gox内で動いていると考えられるにもかかわらず、価格はさらに上昇を記録しました(この「Painting The Tape」アカウントに関しては様々な議論があるので、ググってみてください)。

Mt.GoxがGox

2014年2月7日、膨張を続けるMt.Goxが崩壊を開始しました。主要な取引所すべてにDDoS攻撃が行われました。他の取引所は速やかに再開しました。Mt.Goxは引き出しを中止しました。彼らは2月24日まで引き出しを停止し続けました。 Painting The Tapeが止まるやいなや17日間で、Bitcoinの価格はほぼ25%下落しました。

Mt.Goxにはもう復活するための手段がなく、2月28日Mt.Goxは破産を申請しました。同社は顧客の約75万BTC、自社の約10万BTCを「失った」としています(さまざまな憶測があります)。この事件は取引所の問題にもかかわらず、ビットコイン自体の問題として報道されたため、日本の一般層の間で、ビットコインへの信頼は長らく地に落ちることになりました。

その後の2年間、Bitcoinはスキャンダルで覆われています。Mt.GoxのPainting The Tapeスキームを失い、2015年10月18日には価格は約600ドルから245ドルまで下降しましたが、その後は御存知の通り一本道の上昇トレンドです。

大量保有者のウィンクルボス兄弟

2015年10月18日、ウィンクルボス兄弟がジェミニの取引所を開きます。この取引所はすべての暗号通貨ボリュームの約1~2%しか処理しないものでした。ジェミニは米国内の26州でライセンス供与されており、米国内の法律(州法含む)に完全に準拠していました。当時の最も評判の良い取引所だったのです。

ウィンクルボス兄弟はとても興味深い人物です。Facebookの創業者であるマーク・ザッカーバーグは同大学に通うウィンクルボス兄弟から「@harvard.edu」のメールアドレスを持つ人だけがアクセスできる出合い系サイトを作って欲しいと打診しました。ザッカーバーグはこの打診を基にFacebookを構築し、自らのプロジェクトにしたと言われています。ウィンクルボス兄弟はザッカーバーグを相手取った訴訟で5000万ドルの賠償を得ています。

Winklevoss Brothers via Techchrunch(CC)

彼らはCoinbaseが取引を開始した日に約40,954 BTCを購入しています。ドル建ての価値はその後の数ヶ月で85%下落しました。しかしウィンクルボス兄弟たちは、価格が下がるとさらに70,160 BTCを買いましました。

怪しいドルペッグ通貨Tetherの始まり

ウィンクルボス兄弟はGemini取引所を開設する前、余り評判の良くない取引所BitFinexはTetherと呼ばれる新しいタイプの暗号通貨を導入します。Tetherは米ドル建てになっているという点で興味深い暗号通貨です。そしていま兌換できるど米ドルをTetherが持っていない可能性が浮上しています。これを執筆している2月2日時点でTether疑惑は大暴落の立役者になっています。

最初の数ヶ月間はTetherは全く取引されていませんでした。しかし突然奇妙なことが起こります。ジェミニ取引所が設立されて以降、多くのTetherが取引され始めます。 2016年2月3日までに数ヶ月以内に 100,000ドル相当のTetherが取引され、その価格は10,000ドル以下になることはありませんでした。

当時100,000ドル相当のBitcoinがTetherで購入されていました。もしTetherがMt.Goxの無からBTCを生み出していた疑わしいアカウントと同じように機能していたら…。流通しているTetherと同額の米ドルがリザーブされているのかどうか…ということがいま問いただされているわけですね。

EUの決断と「メジャーデビュー」

Gemini開設からわずか14日後、EUはBitcoin取引について付加価値税(消費税)を付けないと宣言しました。その後Bitcoinの宣伝活動が活発になりました。EUの決定から9日後、Bitcoinは英国の権威ある「The Economist」のトップページにデビューしました。まもなく、WIREDやGwernのような主要なパブリッシャーは、サトシ・ナカモトが誰かを騒ぎ立てるようになりました。同年4月には、Bitcoinで商品を売買するP2Pマーケットプレイスである「OpenBazaar」が100万ドルの資金調達に成功。 ウィンクルボス兄弟はRedditの “Ask Me Anything”で、自分たちがBitcoinに大きな投資をしたことと、ビットコインが4000億ドルの “時価総額”に達するという期待を明らかにしました(じわじわと近づいています)。

2017年の4月にはBitcoinは大幅にボラティリティがなくコイン1個につき約1000ドルの高値をつけるようになりました。

アルトコインの台頭

CBOEとCMEによって先物取引がもたらされたことで、Bitcoin市場は大きくなり賢さを増しました。対象的に、アルトコイン市場は初期のBitcoin市場のようなボラティリティを表現しており、価格操縦が行いやすい。そこに注目が集まりました。例えばリップルの価格を26日間で17.7倍という驚異的な伸びを示しました。リップル創設者のクリス・ラーソンはマーク・ザッカーバーグに匹敵する億万長者に「一瞬」なりました。

そしてICO(イニシャルコインオファリング)の登場です。 2017年だけで235件のICOが行われました(中国の捕捉不能のものは含んでいません)。ICOはFacebookのような会社の新規株式公開(IPO)のようなものです。 IPOは株式を購入する最初のチャンスで、ICOはコインを購入する最初のチャンスです。Facebookとアルトコインの間には重要な違いがあります。Facebookは年間数十億ドルを稼いでいます。 アルトコインは何ももたらしません。

『ウルフオブウォールストリート』でレオナルド・ディカプリオがペニーストックというガラクタ株を顧客に売りつける様を思い出してみるといいでしょう。

The Wolf of Wall Street

2018年にはICOの改装が行われるはずです。新しいICOではKYCをしっかり実行し、有望な投資家にはプリセールで先に投資機会を提供したりします。よりVCライクなのです。

フェイクニュースと市場操縦

そしてフェイクニュースも炸裂しました。2017年11月8日、マイクロソフトはIOTAを「マイクロ決済」に使用するとの噂が出ました。この噂はIOTAの価格を1.04ドルから​​5.55ドルに引き上げることに成功しました。噂は嘘でした。

1か月も経たないうちに、TRONが「The Chinese Netflix」による支払いとして使用されているという噂が流通しています。 TRONの価格は数分で倍になります。嘘が露見する前に、価格は数日で100倍以上に膨らみました。創設者のジャスティンはこの間に保有コインをすべて売り抜けたと言われています。最高です。

同様に Stellarはビザと提携しているという噂が駆け巡りました。この種のフェイクニュースは無数に拡散されたのです。

2018年の年が明けるまで続いたアルトコインの熱狂は、1月の半ばを超えたときには冷え込み始めています。このような市場操縦で多くの新規参入者がお金を失ったと考えられる状況を迎えました。アルトコインのブームは冷え込みつつあり、多くの新規参入者が一発当てようと購入したShitcoin(日本語で草コイン)の大量虐殺を目にすることにします。

最後に…

さて、こうして現在の2月2日を迎えることになりました。上述のTetherなどや強烈な同時多発的なショートを要因として暴落の中にあります。でも、そんなものが屁でもない事がここまで読んでもらえばわかったはずです。暗号通貨の価格は本当に幻想のようなものなのですし、絶えず操縦しようとするプレイヤーを抱えているので、それを見越した戦略の組み立てが必要なのです。

取引所が付けている価格と、暗号通貨そのものブロックチェーンの価値は別物です。こういうときにこそ、Crypto(暗号通貨)のバックグラウンドに注意を払う機会ではないでしょうか。知識は長期的に最もペイする投資だと私は信じています。長期的に見れば「価値があるもの価値がある」ことになるのです。そして無数のアルトコインの死の中からホンモノのプロジェクトが発行したトークンが浮かび上がってくるでしょう。これについては別の記事で触れていきます。

参照

Satoshi Nakamoto”Bitcoin: A Peer-to-Peer Electronic Cash System”

wiki ”Help:Introduction”

The Underground Website Where You Can Buy Any Drug Imaginable